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建売住宅の売買契約を解除したい。契約書に「履行の着手までは手付を放棄して解除ができる」とあるが、どういう意味か。

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ご相談内容

相談年月:2012年10月

2週間前、新築建売住宅を購入する契約をしました。建売住宅といっても、まだ住宅は建っておらず、これから工事が始まります。間取りなどはすでに決められていますが、キッチンや浴槽の色、壁紙の模様などは、自分たちの好みのものを選ばせてもらいました。手付金を50万円払ってあります。
実は、わが家には毎月、自動車のローンとクレジットの支払いがあり、家計を圧迫しています。この状況で住宅ローンが組めるかどうか不安だったのですが、住宅の販売業者が住宅ローンの審査を通すことはできると言うので、契約に至りました。
しかし契約後に両親に相談すると、「無理して住宅ローンを組むことはあまりいいことではない」と反対されました。両親と話し合ううち、販売業者への不信感がつのり、住宅を購入するのが嫌になってしまいました。販売業者は「もう浴槽や壁紙を発注してしまった」と言いますが、今から契約をやめることはできますか。契約書には「履行の着手までは手付を放棄して解除ができる」と書いてあります。

回答

契約にあたって、買主から売主に手付金が支払われると、それは「解約手付」と推定され、相手方が履行に着手するまでの間は、買主はその手付金を放棄し、売主はその倍額を返すことによって、いつでも契約を解除できます。しかし履行の着手後は、手付放棄による契約解除はできなくなり、違約金などを払って解除することになります。
「履行の着手」の意義については、最高裁判決(※1)が出ており、「客観的に外部から認識できるような形で履行行為の一部をなし、または履行行為の提供のために欠くことのできない前提行為をした場合を指す」とされています。また、債務者が履行期前に債務の履行のためにした行為が、「履行の着手」に当たるか否かについては、「当該行為の態様、債務の内容、履行期が定められた趣旨・目的等諸般の事情を総合勘案して決すべき」とした最高裁判決もあります(※2)。
本件では、販売業者が浴槽や壁紙を発注したとのことです。売主の債務とは、売買目的物たる建物の引渡や登記の設定です。これから建築工事を始めるのであれば、買主に引き渡すためでなくても、浴槽や壁紙を発注することは建物の建築に通常必要となる行為です。浴槽や壁紙は、自分たちの好みのものを選ばせてもらったということですが、いくつかある中から選んだに過ぎないと思われます。したがって、売主の行為が客観的に見て履行行為の一部であるとか、欠くことのできない前提行為であるとは認めがたいと考えます。
ただし、選んだ浴槽や壁紙が特殊で、他の購入者であれば選ばないような特別なものであれば、「履行の着手」があったと解する余地が生じます。
ところで、消費者契約法では、消費者契約において契約解除に伴う損害賠償額や違約金を定めた場合であっても、平均的損害を超える部分を無効とすると定めています。平均的損害がいくらになるかは解除の時期等によって異なりますが、手付金を全額放棄しなくても良い可能性がありますので、弁護士に相談することをおすすめします。なお、手付金の方が平均的損害額より低くても、手付けを放棄して解除できる場合、手付金を超える額の賠償金を支払う必要はありません。
※1:最判昭和40年11月24日判時428号23頁
※2:最判平成5年3月16日民集47巻4号3005頁

相談ID:592

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