補修方法編

補修方法シート

【木造住宅(枠組壁工法)】

基礎の沈下グラウト注入工法K-1-503
木軸・木枠
工事概要
  • 建物外周よりグラウト注入用のロッドを基礎下地盤へ削孔・挿入し、そこからグラウトを注入し、注入圧によって建物を基礎からリフトアップする工法である。
  • 注入時は建物変位を監視しながら行う。

注入システム図
対応する不具合と原因 不具合
  • 基礎の沈下(K-1)
原因
  • 地盤条件の設定過程の不良
  • 地盤条件設定値の不適合
  • 施工方法の選択不良
  • 基礎形式の選定の不適合
  • 敷地の安全対策の不備
  • 既存擁壁への対応不備
適用条件
  • 専門家による地盤調査(支持力、沈下量、土質等)により、現況地盤の長期に生じる力に対する許容応力度を確認し、自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことが構造計算により確かめられること。
  • 既設基礎は原則べた基礎とし、注入材が建物直下の床下に噴出しない構造であること。
  • 注入後に特別の調査試験を実施する場合を除いて、原則、注入による地盤の許容応力度の増加は考慮しない。
  • 基礎の沈下の要因が、圧密沈下の問題による場合は、その問題が取り除かれていることが専門家の調査により確認された場合に限り適用する。
  • グラウト注入に必要なスペースがあること。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
沈下の状況、原因を確認し、施工計画を立てる(既往の地質調査結果などを良く理解し、支持層・圧密層の深さを確認する)。
沈下修正に必要な注入量の算出を行う。
2.注入プラント組立
注入プラントを組み立てる(注入プラントには定置式と移動式(トラック)があり現場条件に応じて使い分ける)。
3.変位計の設置
建物に、建物全体のレベルが把握できるよう変位計を複数台設置する(変位計にはレーザーレベル、オートレベル、水盛管式レベル等がある)。
4.グラウト注入
建物外周よりグラウト注入用ロッドを挿入し、そこからグラウトを注入する。
注入時は変位計の経時変化を常時監視しながら注入する。
注入の下端深度は原則として支持層までとし、平面的には不同沈下量が多い箇所を重点的に注入する。
注入圧力が地盤隆起に寄与する深度は浅いほど効果的である。しかし、注入した層より深い箇所が軟弱な場合、硬化後に注入した層自身が沈下する可能性があり、また地盤隆起に必要な反力を確保することを目的として、深部(支持層)から浅部へと注入することが望ましい。
注入時、変位計の経時変化を監視しながら、注入箇所・深度を適宜設定する。また、変位計の監視は注入中だけでなく前日作業後の建物レベルと当日作業前の建物レベルを比較することも重要である。
注入材(グラウト)は、通常、瞬結性のセメント系硬化液を用いる(グラウトは、硬化後の安全性に優れている材料とし、硬化後の体積変化が少なく、早期強度が高いものほど大きな効果が期待できる)。
5.最終確認
建物全体の水平レベルを最終確認する。規定値に達していない場合は、4.の作業を繰り返す(水平レベルは建物外周だけでなく内部の測定も行う)。
6.片付け・清掃
資材及び注入プラントを撤去・搬出のうえ、片付け・清掃をする。
備考
  • 既設の基礎は、べた基礎や表層改良地盤など、注入圧による隆起が生じやすい基礎形式とし、底盤の構造耐力等に支障ない注入を行うこと。
  • 基礎底面直下の地盤は、注入前の時点で必要とする地盤の許容応力度が確保されていることを基本とし、注入による地盤の許容支持力の増加は、特別の調査研究を実施する場合と除くと、期待しないものとする。
  • 工事実施後においても、定期的に沈下の進行状況を確認する。沈下の進行が認められる場合は、補修方法を再検討する必要がある。
  • 沈下修正工事により外壁等にひび割れが生じるおそれがあるので、併せて補修する必要がある。
  • 注入位置が敷地境界線に近接する場合は、敷地外へ流出するおそれがあるので、必要に応じて適切な措置を講じること。また、既設の基礎が擁壁に近接している場合には、躯体の変位・水抜きパイプの監視や擁壁方向への硬化材の流出防止対策等を行い、注意して施工すること。
  • 周辺に井戸、河川、湖沼、海域等の公共用水域及び飲用のための貯水池や養魚施設などがある場合には、その位置、深さ、形状、構造、利用目的及び使用状況等について調査し適切な処置を施して行うものとする。(参考:参考文献2)

注入による地盤隆起の考え方(引用:参考文献3(一部加筆))

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築技術2006年7月号[p140~143] 岡野泰三・高田徹 (株)建築技術
2 薬液注入工 設計資料 平成28年度版[p68~72 (p69 2-2調査)] (一社)日本グラウト協会技術委員会 (一社)日本グラウト協会
3 薬液注入工法ハンドブック(第3版)[p154図7-9] 草野一人 吉井書店