補修方法編

補修方法シート

【鉄筋コンクリート造住宅】

外壁の傾斜柱の増打ち工法G-1-301
RC造
工事概要 柱のせん断強度および靭性を高めるため、既存柱を増打ち補強する工法で、以下2つの場合の補強方法がある。
せん断耐力の増大を図る場合:柱の柱頭・柱脚において、RC巻き立て部分に30~50㎜程度のスリットを設ける。(参考:参考文献1)
曲げ・せん断・軸耐力の増大を図る場合:RC巻き立て部分を上・下階の柱に連続させる。(参考:参考文献1)

①せん断耐力の増大を図る場合
②曲げ・せん断・軸耐力の増大を図る場合
工事概要図(引用:参考文献1一部加筆)
対応する不具合と原因 不具合
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ・欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • コンクリートの打設の不良、養生の不良
  • 工事中の一時的な過荷重の積載
適用条件
  • 補強に伴う荷重の変動を考慮した長期荷重に対して既存の架構が長期に生ずる力に対する許容応力度内に収まっているもので、原則として躯体コンクリートに不良箇所がない場合に適用が可能である。
  • 既存柱の4周面に閉鎖型に一体として補強を行うことができる場合に適用可能な方法である。
  • 柱幅増加による支障がない場合に適用可能な方法である。(採光条件、避難通路確保上の寸法条件など)
  • 帯筋が不足している場合には主にせん断耐力の増大を図る場合の補強を適用する。
  • 帯筋の不足に加えて、主筋の不良・不足がある場合には曲げ・せん断・軸耐力の増大を図る場合の補強を適用する。
  • 曲げ・せん断・軸耐力の増大を図る補強の場合は上下住戸と連続的に柱を増打ちするので、施工範囲の拡大が許容される場合に限り適用可能である。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査等により適用条件を満たしていることを確認する。
構造計画、施工計画の観点から、せん断耐力の増大を図る場合の補強とするか、曲げ・せん断・軸耐力の増大を図る場合の補強にするかを検討・決定する。
2.準備
足場、仮囲いを設置する。
器材・資材の搬入、仮設電源を準備する。
3.既存仕上材の撤去・養生
施工に関わる部分の内装仕上材・サッシ等を撤去する。
  • 既存柱の構造体をあらわすためにモルタル等の仕上げもはつり、撤去する。
既存内装部分に対する養生を行う。
既存躯体の実測と墨出しをする。
4.ひび割れ補修
柱の構造ひび割れを樹脂注入工法で補修する。
5.既存柱の下地調整
既存柱のコンクリート素地面の目荒らしを行なう。
6.鉄筋加工・組立 <せん断耐力の増大を図る場合>
補強鋼材に溶接フープを用いる場合と、溶接金網を用いる場合がある。
  • 溶接フープを用いる場合、溶接フープの径はD10以上で間隔は100㎜以下とし、閉鎖形配筋とする。(参考:参考文献1)

溶接フープを用いる場合
(引用:参考文献1)

  • 溶接金網を用いる場合には、溶接金網を2分割して建込む。溶接金網の重ね長さは最外端の縦筋間で測った長さが縦筋間隔に100㎜を加えた長さ以上、かつ200㎜以上とする。
    溶接金網のサイズは6Φ@50ピッチ程度以上のものを用いる。(参考:参考文献1)

溶接金網を用いる場合(引用:参考文献1)

<曲げ・せん断・軸耐力の増大を図る場合>
床をせん孔し、柱主筋は床スラブを貫通させて上・下階まで連続して配筋し、パネルゾーン内の大梁側面にあと施工アンカーによりフープ筋を設置し、相互をフレアー溶接して閉鎖形とする。
主筋の定着長さを十分確保するとともに、必要に応じてシア―筋等により付着強度の増大を図る必要がある。(参考:参考文献1)(*1)

曲げ・せん断・軸耐力の増大を図る場合の補強例(引用:参考文献1)
7.型枠の加工・組立
打ち込みの工法(流し込み・圧入)に合わせて、型枠を組み立てる。
  • 増し打ち部分の厚さは、あと打ちコンクリートでは100㎜以上、モルタルでは60㎜以上とする。
  • 型枠は、セメントペースト、モルタル等を既存部取合いから、漏出させないよう緊密に組み立てる。(引用:参考文献2)
  • せん断耐力の増大を図る場合は上階梁下と下階梁上に30㎜~50㎜程度のすき間ができるようにせき板を設置する。
8.コンクリートまたはモルタルの打込み・養生
流込み工法又は圧入工法により、コンクリート又はモルタルを打ち込む。(参考:参考文献2)
  • あと打ちコンクリートまたはモルタルの強度はFc=21N/㎜2以上かつ既存建物のコンクリート強度以上とする。特に、コンクリートを充填する場合には、高流動コンクリートを用いるなど、充填性に留意する必要がある。(参考:参考文献1)
コンクリートおよびモルタルの強度を確認、または所定の存置期間を確保した上で、型枠を解体する。
9.内装仕上材等の復旧
サッシ、内装仕上材(床、壁、断熱壁)を復旧する。
  • 増打ちした柱の仕上げも行う。
10.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
足場等を撤去のうえ、片付け、清掃を行う。
備考
  • 構造計算等により構造安全性が確認された場合には、柱の増打ちを外側(バルコニー側)に限定することにより、居住しながらの施工が可能となる。この場合「5.工事手順の例」の3、9を省略することができる。

  • 柱部断面図(chord作成)
  • 補強する柱に、腰壁・垂れ壁が接続する場合や直交壁が取付く場合は、「2017年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針 同解説」の3.3.4 RC巻き立て補強を参照にするとよい。
  • あと施工アンカーを用いて補修を行う場合は平成13国交告第1024号「特殊な許容応力度及び特殊な材料強度を定める件」に適合する必要がある。
  • あと施工アンカーを用いて工事を行う場合は、強度や耐久性等の品質を確保するために、「あと施工アンカー・連続繊維補強設計・施工指針」や「建築改修工事監理指針」等、適切な指針類に基づいて管理・施工する。
*1
鉄筋の定着や端部処理については「公共建築工事標準仕様書 平成28年版」(第1版第7刷)(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、(一社)公共建築協会発行)による。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 2017年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針 同解説[p166~168 、p167(解図3.3.4-1 (a) (b)、3.3.4-2 (a) (b))、p168(解図3.3.4-3) 、p174~176、p175(解図3.3.4-9)] (一財)日本建築防災協会/国土交通大臣指定耐震改修支援センター
2 公共建築改修工事標準仕様書平成28年版(建築工事編)(第2版第1刷)[p325~326、8章12節あと施工アンカー工事](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
3 建築改修工事監理指針 平成28年版(下巻)(第1版第2刷)[p509~510、8章12節あと施工アンカー工事](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
4 「あと施工アンカー・連続繊維補強設計・施工指針」 国土交通省住宅局建築指導課 国土交通省HP
5 各種合成構造設計指針・同解説(第2版)[第4編各種アンカーボルト設計指針] (一社)日本建築学会 (一社)日本建築学会