補修方法編

補修方法シート

【鉄骨造住宅】

床の傾斜ボルトの材質変更又はサイズアップ、スプライスプレート
(添え板)の板厚増加
F-1-405
S造
工事概要

接合部の剛性及び強度を向上させるため、継手部分のボルト、スプライスプレートの変更を行う。


(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床鳴り(F-3)
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 勾配屋根の変形(R-1)
  • 床振動(V-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 骨組や床構成部材等の断面寸法等の不足、配置・間隔の不良
  • 骨組や床構成部材等の架構・接合方法の不良
適用条件
  • 構造計算等により、接合部(継手)の剛性または耐力の不足が確認された場合に適用可能な方法である。
工事手順の例
1.事前調査
構造計算等により、新設するボルトの材質・サイズ、スプライスプレートの厚さなどを決定する。
現場調査において、構造計画検討時の適用条件を満たしていること、又工事の妨げになるものがないことを確認する。
各通り毎に床等の変形を測定し、補強すべき通り等を確認し、工事計画を立てる。
2.足場設置・仕上材等の撤去
補強する梁の直下の周囲に足場を設置する。
足場で床仕上げ(フローリング等)を傷つけないよう、シート及びコンパネ等による保護・養生を行う。
以下の部位を撤去し、補強する梁を露出させる。
  • 梁下部の壁下地材、仕上材
  • パイプサポートを据え付ける床・天井回りの下地材・仕上材
  • 上下階で当該梁に接する建具及び建具枠
  • 梁の変形の程度に応じ、影響を受け傷んだ上階床の下地材、仕上材等
3.パイプサポートの設置
梁と基礎立上がり部(又は1階床スラブ)の間に、パイプサポートを設置する。
4.パイプサポートによるジャッキアップ
パイプサポートのナットハンドを回してパイプサポートを伸長し、建物構造体及び仕上げ面のゆがみが生じないよう5㎜程度ずつ、上階の床が水平になるまでジャッキアップし、上階の床で水準器を用いて、梁または床が水平になり、変形が補正されたことを確認する。
5.既設のボルト等の撤去
既設のボルト及びスプライスプレート等を撤去する。
6.高力ボルト等の新設
周辺の塗装、じんあい、油、錆等を完全に除去する。
補強部材取付け位置を罫書く。
ボルトのサイズを大きくする場合には、リーマーを用いて孔を大きくする。
ボルト穴の端あき距離の確保に注意する。
ボルトにマーキングを行った後に、本締めする。
ボルト締め付けの確認検査を行う。
周辺の塗装(防錆処理)等を行う。
摩擦面は、すべり係数値が0.45以上確保できるよう、ミルスケール(くろかわ)を平グラインダー掛け等により座金外径の2倍以上の幅を除去した後、一様に錆を発生させたものとする。
7.スラブの再施工・補修
撤去した部分のスラブを再度施工する。
スラブにひび割れが生じた場合には、樹脂注入工法で補修する。
8.パイプサポートの撤去
徐々にジャッキを下げ、再度梁のたわみや変形が生じていないこと、及び上階の床が水平であること等を確認した上で、パイプサポートを取り外す。
9.下地材・仕上材の復旧
撤去した上階の内壁及び上階床について下地材、仕上材を張り替える。撤去した建具を取り付ける。既存の建具にゆがみ等がある場合は調整し、変形してもどらないものについては交換する。
撤去した下階天井の下地材、仕上材を張り替える。撤去した下階床及び壁について下地材、仕上材を張り替える。梁の補強により建具等の変更がある場合は、それに応じて新規の建具枠を取り付ける。既存の建具にゆがみ等がある場合は調整し、変形してもどらないものについては交換して取り付ける。
10.最終確認
水準器を用いて床仕上げ面の水平を確認する。
足場等を撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
  • JIS形高力ボルト、トルシア形高力ボルトを使用する場合が多い。
  • 炭素鋼ボルトの強度が240N/m㎡を超える場合の許容応力度等については建基法令第90条、第96条、建基法告示平12建告第1451号「炭素鋼のボルトのせん断に対する許容応力度及び材料強度を定める件」に依る。
  • 耐火被覆がある場合には、その撤去、復旧工事が発生する。
  • 振動に関する不具合に当該補修方法を適用する場合、「5.工事手順の例」におけるジャッキアップ工程は必要ない。
  • 鉄骨工事を伴う補修工事は上向き溶接等高度な技術を要求されるものも含まれるので、①鉄骨施工業者及び管理組織、②工事手順、③溶接技能者の資格、④溶接施工管理技術者及び非破壊試験検査技術者の資格等必要事項を記載した施工計画書又は施工要領書を施工者より提出を受け、事前に工事の内容を確認することが重要である。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 耐震改修促進法のための既存鉄骨造建築物の耐震診断および耐震改修指針・同解説(2011年改訂版)[p116] 耐震改修促進法のための既存鉄骨造建築物の耐震診断および耐震改修指針改訂委員会 (財)日本建築防災協会
2 公共建築工事標準仕様書 平成28年版(第1版)[建築工事編p88(7章4節)](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一社)公共建築協会 (一社)公共建築協会