住宅紛争処理技術関連資料集

【鉄骨造住宅】
勾配屋根からの漏水

1.勾配屋根の防水の考え方(参考1)(参考2)

屋根は、防火性能および荷重や外力を下部構造に伝達する等の観点があるが、雨水や日照、日射等の外部環境と建物内部を遮断するための防水性、断熱性等が要求される。勾配屋根の場合は、屋根面を他の目的に利用することは少なく、景観・耐久性・コスト等の観点から適切な屋根形状、勾配、仕様が選択される。
勾配屋根の設計においては、雨水を速やかに流すことが基本原則であり、吸水・透水性のないふき材を使うこと、適切な屋根勾配とすること、なるべく単純な屋根形状とすること等が求められる
参考1
  • 「建築技術 増刊1993年5月号」p66「勾配屋根の材料と構法」p78「金属屋根構法」(㈱建築技術編集、発行)
参考2
  • 「建築技術1992年4月号」p90「金属板葺」(㈱建築技術編集、発行)

2.屋根ふき材料・構法の分類

(1)
選定の条件(参考3)
勾配屋根の屋根ふき材料は、法的規制と立地環境(気象等)・住宅の規模・構造などの条件を考慮して選定される。屋根ふき材料に求められる主な性能を以下に列記する。
耐火性、防火性
強度(自重、風、積雪、地震等の荷重や外力に対して所要の強度を有し、変形しないこと)
耐水性(雨水によって材質が劣化することなく、水はけのよいこと)
耐久性、耐候性(太陽の熱、紫外線、温度変化による伸縮、凍結などの厳しい自然条件下でも性能が劣化しないこと)
断熱・遮音性(快適な室内環境を確保するために、気温の変化や日射に対する断熱性、雨音などに対する遮音性をもつこと)
施工性・維持管理容易性
意匠性(建物全体および周辺環境とよく調和する形状と色調であること)
参考3
  • 「建築技術 増刊1993年5月号」(㈱建築技術編集、発行)
(2)
構法の分類(参考4)
住宅の勾配屋根においては、野地板の上に下ぶき材を施工し、その上に、屋根ふき材料を施す。一般的に使用される構法は、屋根ふき材料により金属板ぶき、瓦ぶき、住宅屋根用化粧スレートぶき、アスファルトシングルぶきの4つに大別される。
金属板ぶき
  • 材料には、めっき鋼板(溶融亜鉛、溶融亜鉛-5%アルミニウム合金、溶融55%アルミニウム-亜鉛合金、溶融アルミニウム)、塗覆装鋼板、ステンレス鋼板(冷延、塗装)、非鉄金属板(銅板、アルミニウム合金板等)がある。(参考5)
  • 長尺金属板や折板が多く用いられ、材料特性に応じた様々なふき方がある。
瓦ぶき(参考6)
  • 材料には、粘土瓦、プレスセメント瓦(旧称厚形スレート)等がある。
  • 粘土瓦は、形状によりJ形(和瓦)、S形(洋形)、F形(平板)の3種類に分類され、ふき方として引掛け桟瓦葺工法、緊結構法等が一般的である。
住宅屋根用化粧スレートぶき
  • 材料は表面化粧を施した繊維セメント系スレート板により、メーカーの施工要領に基づいて施工されるのが一般的である。
  • 軽量で、色彩が豊富である。
アスファルトシングルぶき
  • 焼付け塗装をした鉱物質粒子をアスファルトルーフィングの表面に散着させ、一定の形状に裁断したもの。

下ぶき材は、屋根ふき材料の下地とし、結露水や湿気を防ぐために使われるもので、次のようなものがある。(参考7)
アスファルトルーフィング
  • 原紙にアスファルトを浸透、被覆し、表裏面に鉱物質粉末を付着させたもの。
  • 単位面積質量による種類は、アスファルトルーフィング1500(従来の1巻35kg相当)、アスファルトルーフィング940(従来の1巻22kg相当)などがある。
改質アスファルトルーフィング
  • アスファルトに合成ゴムや合成樹脂を混合してアスファルトの低温性状や高温性状を改良した改質アスファルトを使用したルーフィングである。
  • 一般ルーフィングタイプ、複層基材タイプおよび粘着層付きタイプがある。
合成高分子系ルーフィング
  • 合成ゴムや合成樹脂を主原料とした成型シート、あるいはこれに異種材料を塗布または積層したもの。
  • 長さや幅は、アスファルトルーフィングに似たものが多い。
参考4
  • 「建築工事標準仕様書・同解説JASS12屋根工事(2004)」((社)日本建築学会編集・発行)
参考5
  • 「建築工事標準仕様書・同解説JASS12屋根工事(2004)」p27表10.1((社)日本建築学会編集・発行)
参考6
  • 「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン(追加版)」(2012)p23~25 (独)建築研究所監修・瓦屋根標準設計・施工ガイドライン編集委員会編集、(社)全日本瓦工事業連盟・全国陶器瓦工業組合連合会・全国厚形スレート組合連合会
参考7
  • 「木造住宅工事仕様書 平成28年版(第1版)」p115~116(住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行)

下ぶき工法の例(引用1)
引用1
  • 「木造住宅工事仕様書 平成28年版(第1版)」p116 参考図6.2.2-1(住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行)

平部のふき方の例(引用2)

棟部のふき方の例(引用2)

谷部のふき方の例(引用2)
屋根ふき材を取り付ける下地の種類および構造は、屋根ふき材料の種類により野地板及び下ぶきの上に葺くもの、母屋及び梁に掛け渡すもの、モルタル等に桟木を取り付けて葺くものなど、多種にわたるため、[金属板の屋根からの漏水][瓦の屋根からの漏水][スレートの屋根からの漏水]の各項による。
引用2
  • 「木造住宅工事仕様書 平成28年版(第1版)」p116 参考図6.2.2-2(住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行)
(3)
構法と屋根勾配の適合性(参考8,参考9)
屋根勾配は、形状や流れ長さ、屋根ふき材料や屋根ふき構法等により、適切な勾配が示されている。
適正な勾配より小さくした屋根は、漏水の発生につながる恐れがあるため、適正な屋根勾配をとることが必要である。
その際に、瓦ぶきのように小さい単位の材料を重ね合わせる構法は、屋根勾配を大きくとるか、又は低勾配に適合した瓦および構法を採用する等の対策が必要である。

3.勾配屋根からの漏水の発生しやすい箇所

陸屋根と同じく勾配屋根からの漏水の場合も、その浸入経路を特定することは容易ではない。これは、室内側の天井面の漏水によるしみ等が発生している位置から屋根面の不具合事象の発生した箇所を単純に推定することが難しいためである。
しかし、一般的な建物の場合、屋根勾配・屋根ふき構法が不適切な場合や屋根ふき材料が劣化している場合等を除いては屋根平面部から漏水する場合は比較的少なく、以下のような部位から漏水する場合が多い。
  • 屋根の谷部
  • 棟・軒先・けらば等
  • 軒先と壁の取合い部
  • 下屋根と壁の取合い部
  • 下屋根に接近したサッシとの取合い部
  • 棟違い部
  • 天窓等の取合い部
  • 水下側の壁立上り部
  • 登り棟と谷の近接部  等
参考8
  • 「建築知識1986年4月号」p69「知っておきたい屋根材の基本知識」((株)建築知識編集、発行)
参考9
  • 「まもりすまい保険 設計施工規準・同解説2012年版第4版」p35((2)屋根勾配【第7条1項】) 住宅保証機構(株)

谷部・けらば部・軒先と壁の取合い部等(引用3)
引用3
  • 「木造住宅工事仕様書 平成28年版(第1版)」p118 参考図6.2.2-5(住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行)

水下側の壁立上り部(引用4)

登り棟と谷の近接部(引用4一部加筆)
漏水の発生しやすい箇所
引用4
  • 「建築技術2010年3月号」p125,126「不具合が生じやすい屋根部分の納まり」(㈱建築技術編集、発行)
参考-1:「JIS A 6005 アスファルトルーフィングフェルト」について(引用5一部加筆)
JIS改正規格の種類及び製品の単位面積質量の呼びと従来製品の呼びの対称
改正規格 従来製品の呼び
種 類 製品の単位面積質量の呼び
アスファルトフェルト 430 アスファルトフェルト20kg品
アスファルトフェルト 650 アスファルトフェルト30kg品
アスファルトルーフィング 940 アスファルトルーフィング22kg品
アスファルトルーフィング 1500 アスファルトルーフィング35kg品
砂付ルーフィング 3500 砂付ルーフィング40kg品
引用5
  • 「JIS A6005:2014(アスファルトルーフィングフェルト)」表1((一財)日本規格協会発行)
各製品の主な用途(引用6一部加筆)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
引用6
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)5節 下葺 p100,101((社)日本建築学会編集、発行)
参考-2:「改質アスファルトルーフィングの推奨品質」について(引用6)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
アスファルトルーフィング工業会規格
参考-3:天窓からの雨水浸入の調査方法(参考10)
設置場所
  • 浴室など高温多湿になる所を避けているか。
  • 熱だまり(煙突状納まり)になる所を避けているか。
  • 上階軒の真下を避けているか。
勾配屋根の傾斜
  • 天窓サッシメーカーの制限範囲が守られているか。
ルーフィングの納まり
  • 設置用木枠が隠れるまでルーフィングが立ち上げられているか。
  • ルーフィングと天窓本体を防水テープで四周貼り付けてあるか。
水切り材
  • 金属板ぶき、瓦ぶき、住宅屋根用化粧スレートぶき、アスファルトシングルぶき、それぞれの専用水切りが使用されているか。
シーリング処理
  • 天窓サッシメーカーの指示があるところにシーリング処理が施されているか。
参考10
  • 「サッシまわりの雨水浸入防止対策(木造住宅用)」p120((社)日本サッシ協会)