調査方法編

建具の開閉不良

1.建具の開閉不良とは

建具の開閉不良とは、ドア、窓等の内部及び外部建具が開閉時に開きにくい、つかえる等何らかの支障があることをいう。
建具の開閉不良は、日常生活に直接影響があるため、軽微な段階で発見されやすい。

2.発生原因

(1)
適切な設計・施工でも通常起こり得る軽微な開閉不良
適切な設計・施工が行われていても、使用しているうちに建具金物等がゆるみ、建付けに軽微なくるいが生じたり、木製建具において乾燥や建具両側の室の温湿度の違いにより軽度なそりが生じて建具の開閉不良が起こり得る。この場合は、建具の調整をすることにより不具合は解消する。
(2)
床・壁・天井の変形
外壁(内壁)の傾斜、床の傾斜やたわみ、天井のたわみ等に伴って、建具枠が変形し建具の開閉不良が発生することがある。
(3)
不適切な建具枠、建具の設計
建具枠、建具の設計段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、建具の開閉不良につながることがある。
建具枠の材料の選択
建具枠、建具の仕様の選択
建具枠の取付補強
(4)
不適切な建具枠,建具の施工等
建具枠、建具の施工段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、建具の開閉不良につながることがある。
(材料)
建具枠の材料の選択
建具枠、建具の仕様の選択
(施工)
建具枠の取付補強
建具の取付位置及び取付方法
事前確認等

調査の視点

現場調査等にさきがけて、発生原因特定のための調査に必要な情報を把握し、調査の進め方の詳細等を検討しておく。

調査方法

  1. 居住者及び住宅供給者へのヒアリング並びに次の「2.」により、主として以下のような情報を確認し、整理しておく。
    住宅の構造・建て方、契約の内容等(木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造/戸建、集合 等)
    不具合事象の状況、発生部位、施工の状況等
    不具合事象の発見時期(新築後経過年数)
    不具合事象の程度の進行状況
    不具合事象の発生と季節・天候等との相関関係
    他の種類の不具合事象の発生状況
    周辺の住宅における同様の不具合事象の発生状況
    住宅の立地条件(気候・地形等)、近隣の状況
    不具合事象の発生後の処置の有無及び状況
  2. 住宅性能表示制度に基づき、建設住宅性能評価書が交付された住宅の申請図書等は、規定された期間、登録住宅性能評価機関等に保存される。
    したがってその保存期間内であれば、それらの申請図書等を、住宅紛争処理支援センターを経由して当該評価機関等から取り寄せることが可能である。
    (1)
    登録住宅性能評価機関に保存される帳簿は、以下の通りであり、業務の全部を廃止するまで保存される。(品確法第19条第1項、同法施行規則(以下「規則」という。)第20条第1項三号)
    住宅性能評価書に記載した事項を記載した帳簿
    (2)
    登録住宅性能評価機関に保存される図書は、以下の通りであり、建設住宅性能評価書が交付された日から20年間保存される。(品確法第19条第2項、規則第21条第1項・第3項、第15条第1項第一号ロ)
    建設住宅性能評価申請書(変更建設住宅評価申請書を含む)
    建設住宅性能評価申請書の添付図書
    • 設計住宅性能評価書
    • 設計評価申請添付図書
      住宅性能表示制度に基づく認定又は認証を取得した住宅又は住宅の部分については、以下の書類が添付される。
      * 住宅型式性能認定書の写し
      * 型式住宅部分等製造者等認証書の写し
      * 特別評価方法認定書の写し
      * 建築基準法に基づく確認済証
    施工状況報告書
    規則第6条第4項に規定する図書
    検査に際し評価機関が評価申請者に提出させたもの
    (3)
    登録住宅型式性能認定等機関、登録外国住宅型式性能認定等機関、登録試験機関又は登録外国試験機関に保存される図書は、以下の通りであり、認定又は認証が失効した又は取り消されたときから20年間保存される。(規則第68条第3項、規則第94条第3項)

    <住宅型式性能認定の場合>(規則第68条第1項第一号)

    住宅型式性能認定申請書
    住宅型式性能認定申請書の添付図書
    住宅型式性能認定書の写し
    その他審査の結果を記載した書類

    <型式住宅部分等製造者の認証(更新)の場合>(規則第55条第1項第二号(第三号))

    型式住宅部分等製造者等認証(更新)申請書
    型式住宅部分等製造者等認証(更新)申請書の添付図書
    型式住宅部分等製造者等認証書の写し
    その他審査の結果を記載した書類

    <特別評価方法認定の場合>(規則第94条第1項、第82条第1項)

    特別評価方法認定のための審査に係る試験申請書
    特別評価方法の概要を記載した書類
    特別評価方法により代えられるべき部分を明示した書類
    平面図等その他の試験を実施するために必要な事項を記載した図書
    試験の結果の証明書の写し
    その他審査の結果を記載した書類
    上記資料に基づき、住宅の性能表示項目に関して調査する場合には、該当する等級毎の基準を参照する。
    なお、評価方法基準の詳細については、平13国交告第1347号による。
  3. 以上の情報に基づき、調査の方法・進め方の詳細等を検討しておく。
不具合事象の程度の確認

-1 建具枠の変形の確認

調査の視点

  • 建具の開閉不良が建具枠の変形に起因しているかを確認する。

調査方法

1.建具枠の水平・垂直度の確認

(1)調査方法

竪枠の垂直度の確認
  • 下げ振り等を竪枠上端から下枠まで垂らし、垂直度を目視及び測定にて確認する。
下枠の水平度と変形の確認
  • 下枠・敷居等に勾配計をあて、水平度を目視及び測定にて確認するとともに、下枠・敷居等の変形を目視にて確認する。
上枠の水平度の確認
  • 上枠、鴨居等の両端角に水糸等を水平に張り、水平度を目視及び測定にて確認する。
枠の構成面のねじれの確認
  • 枠の構成面で対角線に水糸を張って、中央部で両水糸のはなれ具合を測定する。

(2)注意事項等

  • 建具の開閉を数回行い、どの部分に不具合事象が生じているかを目視等により予め確認しておく。

調査結果の考え方

  • 建具枠の水平・垂直度にくるいが生じている場合は、建具枠の変形に起因する建具の開閉不良の可能性が高い。
  • 建具枠の水平・垂直度にくるいが生じていない場合は、建具そのものの変形や、取付け金物の不良等に起因する建具の開閉不良の可能性が高い。

使用する検査機器

1-2 床・壁・天井の変形の確認

調査の視点

  • 建具枠の変形が確認された場合は、それが床・壁・天井の変形に起因しているかを確認する。

調査方法

1.床・壁・天井の変形の確認

(1)調査方法

外壁(内壁)の傾斜の確認
床の傾斜・たわみの確認
天井のたわみの確認
  • 上枠の変形が確認された場合は、建具枠が設けられている周辺の天井のたわみの程度を伸縮スケール等を用いて、上枠に沿って測定する。
    <詳細は[天井のたわみ-1  木造(軸組)木造(枠組)RC造S造]を参照のこと>

(2)注意事項等

調査結果の考え方

  • 外壁(内壁)に傾斜が発生している場合は、それが原因で建具枠の変形が生じている可能性が高い。
  • 床に傾斜が発生している場合、又はたわみが発生している場合は、それが原因で建具枠の変形が生じている可能性が高い。
  • 天井のたわみ量が大きく、建具枠上部の梁がたわんでいる場合は、それが原因で建具枠の変形が生じている可能性が高い。
  • 外壁(内壁)・床・天井のいずれにも、傾斜・たわみが発生していないか、あるいはわずかな傾斜,たわみが発生している場合は、建具枠そのものが変形している可能性が高い。

使用する検査機器

1-3 建具の変形の確認

調査の視点

  • 建具枠の変形が確認されない場合は、開閉不良が建具そのものに起因している可能性が高いため、建具の変形を確認する。

調査方法

1.建具の変形の確認

(1)調査方法

  • 開き戸等の場合は、たてつけたままで建具の2つの対角線状に水糸(又はスケール)を当て、その長さを測定し比較する。また、対角線状に水糸を張り、建具中央部のそりの有無を確認する。
  • 引違い戸、引き戸等の場合は、建具の障子相互、建具の障子と戸袋が擦れている箇所がないかを目視等にて確認する。次に、建具をはずして上記の開き戸と同じ方法でそりの有無等を確認する。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 建具の変形が確認された場合は、建具そのものの変形が原因で建具の開閉不良が生じている可能性が高い。

使用する検査機器

  • スケール
  • 水糸
建具枠,建具の設計内容の確認

調査の視点

  • 建具枠及び建具の設計が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.建具枠,建具の設計内容の確認

確認のポイント
建具枠の材料の選択
建具枠、建具の仕様の選択
建具枠の取付け補強

(1)調査方法

  • 当該住宅の設計図書(設計図、仕様書等)を対象として、上記<確認ポイント>に沿って建具枠及び建具の取付け、仕様等が適切であるかを確認する。なお、適切であるかの検討にあたっては、建設住宅性能評価関連図書等、住宅金融公庫監修「鉄筋コンクリート造・鉄骨造等住宅工事仕様書」、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書」「建築工事監理指針(下巻)」、その他の仕様書、基準等が参考となる。

(2)注意事項等

  • 特になし
参考1
  • 「鉄筋コンクリート造・鉄骨造等住宅工事仕様書 平成22年改訂」p145(14)((独)住宅金融支援機構監修、(財)住宅金融普及協会発行)
参考2
  • 「公共建築工事標準仕様書 平成28年版(第1版)」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、(一社)公共建築協会発行)
参考3
  • 「建築工事監理指針平成28年版(第1版)(下巻)」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、(一社)公共建築協会発行)

調査結果の考え方

  • ①建具枠の材料の選択
    強度の必要な木製枠の開き戸の吊元等に不適切な材料を選択している場合などは、建具枠の強度不足等により建具枠の変形を誘発し、建具の開閉不良が生じている可能性が高い。
    (アルミサッシや既製品の枠付建具は、上記原因によることは少ない。)
    参考
    窓、出入口の樹種(引用1)
    窓、出入口枠の樹種:吊元枠、水掛りの下枠及び敷居はひのき、その他は松又は杉とする。
  • ②建具枠、建具の仕様の選択
    木製建具の見込寸法が不足している場合や建具両面の仕上材が異なる場合等は、建具の仕様の選択不良により建具の変形(そり等)を誘発し、建具の開閉不良が生じている可能性が高い。
  • ③建具枠の取付け補強
    竪枠を取付けている間柱や、上枠を取付けているまぐさ等の断面寸法が不足している場合等は、建具枠の取付け補強が適切でないために建具枠の変形を誘発し、建具の開閉不良が生じている可能性が高い。
  • また、建具の形式、大きさ、重量等に見合った建具金物(丁番等)が選択されていない場合等は、取付け部の耐力不足等により建具の開閉不良が生じている可能性が高い。
引用1
  • 「公共建築工事標準仕様書 平成28年版(第1版)」 建築工事編p198(12.5.1)(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、(一社)公共建築協会発行)
参考4
  • 「建築知識1994年8月号」p80、p100((株)建築知識編集、発行)

使用する検査機器

  • 特になし
建具枠,建具の施工状況等の確認

調査の視点

  • 「建具の開閉不良」が、建具枠及び建具に起因する可能性が高いことを前提とし、建具枠及び建具の施工が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.書類による確認

確認のポイント
建具枠の材料の選択
建具枠、建具の仕様の選択
建具枠の取付補強
建具の取付位置及び取付方法

(1)調査方法

  • 施工記録(施工図、工事状況報告書、工事写真等)及び建設住宅性能評価関連図書により、上記確認ポイントに沿って把握できる範囲において、建具枠及び建具に係る工事が、設計通りに行われているかを確認する。なお、設計図書に記載のない部分については、住宅金融公庫監修「鉄筋コンクリート造・鉄骨造等住宅工事仕様書」、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書」「建築工事監理指針(下巻)」、その他の仕様書、基準等を参考に、施工が適切に行われているかを確認する。

(2)注意事項等

  • 特になし

2.目視等による施工状況の確認

(1)調査方法

  • 目視等により、不適切な施工が行われていないかを現場において確認する。
  • 建具枠のぐらつき、丁番のネジのゆるみの有無等を確認する。

(2)注意事項等

  • 特になし
参考5
  • 「鉄筋コンクリート造・鉄骨造等住宅工事仕様書 平成22年改訂」p145(14)((株)住宅金融支援機構監修、(財)住宅金融普及協会発行)
参考6
  • 「公共建築工事標準仕様書 平成28年版(第1版)」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、(一社)公共建築協会発行)
参考7
  • 「建築工事監理指針平成28年版(第1版)(下巻)」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、(一社)公共建築協会発行)

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について、設計どおりの施工が行われていない場合、又は不適切な施工が行われていた場合には、建具枠及び建具の変形を誘発し、建具の開閉不良が生じている可能性が高い。
    建具枠の材料の選択
    建具枠,建具の仕様の選択
    建具枠の取付補強
    建具の取付位置及び取付方法
  • 「①の建具枠の材料の選択」の不適切な施工例として、敷居の溝が木裏に彫られている場合には、木材のそりが生じ建具をもち上げ、開閉不良につながることがある。

木表・木裏とその使い分け(引用2)
  • 「③の建具枠の取付不良」の不適切な施工例として、敷居の下にくさび・パッキンが挿入されていない場合は、敷居が下がり建具の開閉不良につながることがある。また、押入の鴨居と天袋の棚の框が釘留めされている場合は、棚の重量物による棚の框のたわみが鴨居に直接伝わり、建具の開閉不良につながることがある。
引用2
  • 「新・木のデザイン図鑑」p123(江原幸壱著、㈱エクスナレッジ発行)(2009年6月発行)

使用する検査機器

  • 特になし
使用・メンテナンス状況の確認

4 使用・メンテナンス状況の確認」による。

外的要因の確認

5 外的要因の確認」による。

詳細調査の必要性の検討

6 詳細調査の必要性の検討」による。