調査方法編

金属板の屋根からの漏水

1.金属板ぶき工法の種類と特性

(1)
金属板ぶき工法の種類
  • 住宅に使用される金属板ぶきの代表的な屋根ふき型式を下表に示す。
  • 金属板ぶき工法は、メーカーの責任施工で行われることも多く、メーカー毎にふき材料・施工方法等に違いがあるため、使用されているメーカーの施工方法等を事前に確認しておくと調査が進めやすい。
<金属板ぶき工法の種類>(参考1)
屋根ふき型式
特徴








一文字ぶき(平ぶき) 金属切板(定尺もの)を重ねて施工する。仕上りは帯状の形となる。
一文字ぶきの変形として菱ぶき、亀甲ぶき等がある。
立て平ぶき 心木なし瓦棒ぶきの心木立上り部分を狭くして、溝板の端で巻はぜとして立ち上げて仕上げる。
あり掛ぶき 立て平ぶきの変形で、溝板の立はぜとあり(溝板の中心部に鋼線がある)を介して下地に留め付ける。
瓦棒ぶき 心木あり瓦棒ぶき 屋根面の流れ方向の鋼板のジョイント部を棒状に立ち上げてふいていく。瓦棒に心木を入れたふき方。
心木なし瓦棒ぶき 同上。心木のかわりに通し吊子、部分吊子を用いたふき方。
横ぶき 長尺コイル状の金属板を一文字ぶきのようにふく方法である。ふき板を水下(軒先側)から水上(棟側)方向に横にふいていく。
波板ぶき 波板の成型板を重ねぶき工法(2山重ね、2山半重ねなど)でフックボルトやスクリュー釘を使用して直接下地に留め付ける
金属瓦ぶき 瓦の形状にプレス加工された金属板を横面にそってふくものと屋根面の流れ方向にふくものとがある。
折板ぶき 塗装溶融亜鉛めっき鋼板等の折板状の成型板と重ねて梁等の構造体にタイトフレームにより直接取り付ける。
ふき方として重ね形折板ぶき、はぜ締め形折板ぶき、かん合形折板ぶきがある。
参考1
  • 「建築技術 増刊1993年5月号」p80~p86(丸山郁夫)(㈱建築技術編集、発行)
参考2
  • 「鋼板製屋根構法標準SSR2007」p77((独)建築研究所監修、鋼板製屋根構法標準改訂委員会編集、(社)日本金属屋根協会発行)
<一文字ぶき>(引用1)

<立て平ぶき>(引用1)

<あり掛ぶき>(引用1)

<瓦棒ぶき・心木なし>(引用1)

<横ぶき>(引用1)

<波板ぶき>(引用1)

<金属瓦ぶき>(引用1)

<折板ぶき>(引用1)
(2)
屋根ふき材料と屋根ふき型式との関係
  • 屋根ふき材料によって、確保可能な屋根勾配や屋根各部の納まりが異なる。そのため屋根形状によっては適さないものもある。
  • 表「屋根材料と屋根ふき型式との関係」により屋根ふき材料による適用可能なものを示す。
引用1
  • 「建築技術 増刊1993年5月号」p80~p83,p85,p86(丸山郁夫)(㈱建築技術編集、発行)
<屋根材料と屋根ふき型式との関係>(引用2一部加筆)
金属屋根材料
屋根ふき型式




立はぜぶき 瓦棒ぶき
 








折板ぶき











































表面処理鋼板 塗装溶融亜鉛めっき鋼板
塗装溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板
溶融アルミニウムめっき鋼板
溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板
塗装融解55%アルミニウム-亜鉛めっき鋼板
ポリ塩化ビニル被覆金属板
耐酸被覆鋼板
ステンレス鋼版
アルミニウム合金板
銅板・銅合金板 - - - -
チタン板 - - - -
(注)
◎:適用可能
○:適用可能であるが加工又は施工に注意が必要
-:使用例がほとんど見られない
引用2
  • 「建築工事監理指針・平成28年版(第1版)(下巻)」p203(表13.2.2)(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、(一社)公共建築協会発行)
(3)
金属板ぶき工法の下地
(平板ぶき)(参考3)
  • 平板ぶき屋根(波板ぶきを除く。)のふき材は、木造、鉄骨造ともに野地板に取り付ける。
  • 屋根ふき材と野地板の間に下ぶき材をふき、屋根ふき材の間から浸入した雨水を下ぶき材で受ける。
(金属瓦ぶき)
  • 金属瓦ぶき屋根は、製造所の仕様に基づき取り付ける。
(折板ぶき)(参考3)
  • 折板ぶき屋根のふき材は、タイトフレームを介して躯体構造の下地に直接取り付ける。
  • 折板相互の接合部が雨水の浸入を防ぐ構造になっており、下ぶき材は用いない。
参考3
  • 「建築工事標準仕様書 JASS12 屋根工事(2004年版)」p92(4.1適用範囲)、p97(5.1適用範囲)((社)日本建築学会編集、発行)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
折板ぶきの下地の例(引用3)
引用3
  • 「建築工事標準仕様書 JASS12 屋根工事(2004年版)」p219((社)日本建築学会編集、発行)

2.金属板の屋根からの漏水の発生原因

(1)
不適切な屋根の設計
屋根の設計段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、漏水につながることがある。
屋根工法・材料の選択
屋根の各部位の設計上の納まり
屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
下ぶきの工法・材料の選択
(2)
不適切な屋根の施工等
屋根の施工段階において、以下の事項に不適切な点がある場合は、漏水につながることがある。
屋根材料・下ぶき材等の品質
屋根の各部位・下ぶきの施工
屋根勾配、排水ルート、樋の施工
(3)
不適切な使用・メンテナンス
居住者の使用・メンテナンスにおいて、以下の事項に不適切な点がある場合は、漏水につながることがある。
屋根面の過度の歩行等
設備機器の設置等
樋等のメンテナンス
事前確認等
  • 0 事前確認等」によるほか、調査に先立ち「陸屋根からの漏水」の「0 事前確認等」に例示しているヒアリングシートを参考に居住者へのヒアリングを行う。
漏水の発生状況の確認

調査の視点

  • 屋根からの雨水の浸入による漏水は、浸入経路を特定することが容易でない場合が多いが、屋根面および取合い部に発生している穴、はがれ、ずれ等の状況を観察することにより、大まかに発生原因を推定することは可能である。
  • 屋根の直下階の天井面にあらわれた漏水は、必ずしも屋根からの浸入とは限らない場合もあり、外壁、軒等屋根面以外からの浸入の可能性も考慮して、調査を行う。また、小屋裏等の結露の可能性も考慮して、調査を行う。

調査方法

1.漏水発生部位の確認

(1)調査方法

  • 漏水(又は漏水によるしみ、はがれ等)が住戸内部のどの部分に発生しているかを目視にて確認する。必要に応じて、小屋裏点検口等より屋根下面の漏水の発生部分を目視にて確認する。
  • 屋根面および取合い部に穴、はがれ、ずれ等がないかを目視等により確認する。
  • 具体的には、高所観察用のビデオカメラの活用や、可能ならば屋根に登り目視等により確認する。
  • 部位ごとに確認する主な項目を以下に列記する。
    屋根面
    • 金属板に腐食等による穴があいていないか。特に汚れを生じていたり変色している部分を中心に確認する。
    • 金属板に傷、はがれが生じていないか。
    • かわら棒ぶきの場合、包み板につぶれがないか。
    • かわら棒ぶきの場合、かわら棒の位置のずれ、ねじれ等がないか。また、心木に腐れがないか。心木に打ち込んだ釘の穴が拡大していないか。
    天窓、壁の取合い部分
    • 開口部の水切り部材と屋根材との間に明らかな隙間が生じていないか。
    • シーリング材に隙間が生じていないか。
    アンテナ、太陽熱温水器、太陽光発電システム等の脚部周辺
    • 機器荷重による屋根材の破損が起こっていないか。
    • 脚部等のシーリング等に劣化、欠損等がないか。
    樋回り
    • 軒樋にゴミなどによる詰まりが生じていないか。
    • 勾配の方向は正しくとられているか。竪樋のほうが低くなっているか。
    • 樋の変形・傾斜等が生じていないか。

(2)注意事項等

  • 目視調査等は降雨時又は降雨の直後がわかりやすい場合もあるので、想定される漏水原因によって、調査日を検討する。
  • 居住者に確認をし、漏水時期等を把握しておくことも重要である。新築直後か、経過年数が長いか、又は漏水発生の直前に防水改修工事や設備機器設置等の工事を行ったか等を確認しておく。
  • 結露による漏水の発生も想定されるため、外部からの水の浸入であると判断せずに、漏水の発生した部屋等の使用状況(暖房、換気等)および小屋裏等の換気状況についても確認する。

調査結果の考え方

  • 屋根面に穴、はがれ、欠損、ずれ等の隙間が確認された場合には、当該部が漏水原因の一つである可能性が高い。
  • 棟等の屋根頂部や谷部分又は軒先・けらば等の屋根端部に、欠損、ずれやシーリング材等の隙間が確認された場合には、屋根の棟・谷又は軒先・けらばの当該部が漏水原因の一つである可能性が高い。
  • 軒樋に詰まりや変形が生じている場合には、当該部が副次的な漏水原因の一つである可能性が高い。
  • 天窓等の開口部、壁との取合い部分、設備機器設置箇所の周辺に、ひび割れ、穴、はがれ、欠損、ずれ等の隙間が確認された場合には、これらの異種部材との接合・接触部分が漏水原因の一つである可能性が高い。
参考4
  • 「木造の詳細1構造編 新訂三版」(㈱彰国社編集、発行)
参考5
  • 「水にまつわるトラブルの事例・解決策(設備編)」(1994年)(「設備漏水」編集委員会著、学芸出版社㈱発行)

使用する検査機器

設計内容の確認

調査の視点

  • 屋根の金属板ぶきの設計が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.屋根の設計内容の確認

確認のポイント
屋根工法・材料の選択
屋根の各部位の設計上の納まり
屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
下ぶきの工法・材料の選択

(1)調査方法

  • 設計図書(設計図、仕様書等)を対象として、屋根の金属板ぶきの設計が適切に行われているかを確認する。なお、適切であるかの検討にあたっては、建設住宅性能評価関連図書等やメーカーの標準仕様書、その他の仕様書、基準等に照らして確認する。
  • <確認のポイント>に沿って確認する主な項目を示す。
    屋根工法・材料の選択
    • 屋根形状・勾配と金属板ぶき工法との適合性
    • 屋根ふき材料の寸法・規格
    • 屋根下地(野地板、たる木等)の材料
    • シーリングの材料
屋根の各部位の設計上の納まり
  • 棟、軒先、けらば、谷部等の納まりが適切に設計されているか。
  • 天窓等の開口部や壁との取合い部の水切り金物やシーリングの納まりが適切に設計されているか。
  • 屋根に取り付けられた設備機器等(参考6,参考7,参考8)の留付けが適切に行われているか。
屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
  • 屋根勾配が適切か。屋根ふき材料に適した標準的な勾配となっているか。
  • 樋の排水のルート及び径が適切に設計されているか。
下ぶきの工法・材料の選択
  • 金属板ぶき工法による下ぶきの有無
  • 下ぶきのふき方(重ね幅、立ち上げ高さ、増張り幅等)(参考9)
  • 下ぶき材の種類・規格(参考9)

(2)注意事項等

  • 特になし
参考6
  • 「既存住宅の瑕疵担保責任保険施工・検査基準(住宅用太陽電池モジュール設置工事編)」(2010)国土交通省住宅局
    ホームページ
参考7
  • 「住宅瑕疵担保責任保険[現場検査]講習テキスト(リフォーム瑕疵保険&既存住宅売買瑕疵保険)」(2010)(国土交通省住宅局、(一社)住宅瑕疵担保責任保険協会・発行)
参考8
  • 「住宅用太陽光発電システム設計・施工指針」平成19年3月(住宅用太陽光発電システム施工品質向上委員会編集)
参考9
  • 「木造住宅工事仕様書 平成28年版(第1版)」p115 6.2(住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行)

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について、適切な設計が行われていない場合は、屋根の防水対策上の配慮不足が原因で漏水につながっている可能性が高い。
    屋根構法・材料の選択
    屋根の各部位の設計上の納まり
    屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
    下ぶきの工法・材料の選択

使用する検査機器

  • 特になし
施工状況等の確認

調査の視点

  • 屋根の金属板ぶきの施工が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.書類による確認

確認のポイント
屋根材料・下ぶき材等の品質

(1)調査方法

  • 施工記録(施工計画書、工事状況報告書、工事写真等)及び建設住宅性能評価関連図書等により、把握できる範囲において屋根の金属板ぶき工事が設計どおりに適切に行われているかを確認する
    • 屋根ふき材料の寸法・規格
    • 下ぶき材の規格
    • 屋根下地(野地板、たる木等)の材料
    • シーリングの材料

(2)注意事項等

  • 特になし

2.目視等による施工状況の確認

確認のポイント
屋根の各部位・下ぶきの施工
屋根勾配、排水ルート、樋の施工

(1)調査方法

  • 書類により確認した内容と実際の施工状況が一致しているか、不適切な施工が行われていないかを目視等により確認する。
  • 不適切な箇所が発見された場合には写真等で記録する。確認した結果を設計図書等と照らし合わせて確認する。
  • 必要に応じて、屋根ふき材の一部をはがし、ふき材の重ねしろ、屋根下地の留付け状況等を確認する。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について、設計どおりの施工が行われていない場合、又は不適切な施工が行われている場合は、金属板ぶきの施工不良等が原因で漏水につながっている可能性が高い。
    屋根材料・下ぶき材等の品質
    屋根の各部位・下ぶきの施工
    屋根勾配、排水ルート、樋の施工
  • 「②屋根の各部位・下ぶきの施工」について、下ぶき材に破れが確認された場合、又は張る方向、重ね等が不適切な場合、特に瓦棒ぶきの場合等では下ぶき材の当該部が漏水の原因の一つである可能性が高い。

使用する検査機器

使用・メンテナンス状況の確認

4 使用・メンテナンス状況の確認」によるほか、以下の確認を行う。

調査の視点

  • 屋根が適切に使用されているかを確認する。
  • 金属板ぶきの勾配屋根は、歩行や重量物の積載を前提としていないため、過度の歩行等不適切な使用がされた場合は、漏水につながることがある。
  • 通常、屋根は人の目が届きにくいため、定期的なメンテナンスが行われていない場合は、樋等のつまり等により、排水不良につながることもある。

調査方法

1.使用状況等の確認

(1)調査方法

  • 事前確認等を参考にして、不適切な屋根の使用がされていないか、また、使用状況が適切かを目視等により確認する。
    屋根面の過度の歩行等の行為がなかったか。
    新たな設備機器の設置等の工事が行われていないか。
    樋等が落葉やゴミによってつまっていないか。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について不適切な点がある場合は、使用・メンテナンスの不良が原因で漏水につながっている可能性が高い。
    屋根面の過度の歩行等
    設備機器の設置等
    樋等のメンテナンス

使用する検査機器

  • 特になし
外的要因の確認

5 外的要因の確認」による。

詳細調査の必要性の検討

6 詳細調査の必要性の検討」による。