調査方法編

スレートの屋根からの漏水

1.スレートぶき工法の種類

(1)
スレートの種類
  • スレートには、その語源となった天然スレートと、セメント、けい酸質原料、石綿以外の繊維質原料、混和材料などを主原料として用いて加圧成形し化粧板にした化粧スレート(引用1)とがある。
  • 化粧スレートは、JIS A5423(住宅屋根用化粧スレート)に規格化され、平形屋根用スレートと波形屋根用スレートに区分される。
  • 主として平形屋根用スレートが新築用に使用されるため、本項では平形屋根用スレートを対象とする。(参考1)

    平形屋根用スレートの形状(引用2)
  • JIS規格の平形屋根用スレートの寸法及び許容差は下表に示す。
平形屋根用スレートの寸法(引用3)   単位 mm
種類 全長さ 全幅(各働き幅に対する) 厚さ 水切り重ね長さ
寸法 許容差 寸法 許容差 寸法 許容差 施工寸法
平形屋根用スレート 350~500 ±3 600~910 ±3 5以上6未満 ±0.5 50以上
6以上7未満 ±0.6
7以上8未満 ±0.7
8以上9以下 ±0.8
側面は、通常、表面にほぼ直角でなければならない。ただし、特殊な目的をもって側面を加工したものは、この限りでない。
注:上表以外の寸法の場合は、受渡当事者間の協定による。この場合、全長さ及び全幅の許容差は上表とする。厚さの許容差は±10%以内とする。
(2)
スレートのふき工法
  • 屋根スレートの防水性能は、主に屋根勾配と最大流れ長さに左右される。
  • スレートにスリットがある屋根材は、緩勾配には適さない。また、最大流れ長さにも制約がある。
  • 標準的な工法による場合の一般的な基準を下表に示す。
引用1
  • 「JIS A5423:2013(住宅屋根用化粧スレート)」①適用範囲

参考1
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p136 8.1適用範囲の解説((社)日本建築学会編集、発行)

引用2
  • 「JIS A5423:2013(住宅屋根用化粧スレート)」図1 ((一財)日本規格協会発行)

引用3
  • 「JIS A5423:2013(住宅屋根用化粧スレート)」表4 ((一財)日本規格協会発行)
屋根勾配と最大流れ長さ(参考)(引用4一部加筆)
屋根材種類 勾配 2.5/10 3/10 3.5/10 4/10 4.5/10
スリットのない屋根材 切妻 7m以下*1 7~10m以下*2 10~14m以下*2 13~19m以下*2 16~25m以下*2
寄棟 5m以下*1 5~7m以下*2 7~10m以下*2 10~14m以下*2 13~19m以下*2
スリットのある屋根材 切妻 不適 不適 不適 10m以下 13m以下
寄棟 不適 不適 不適 7m以下 10m以下
*1 2.5/10勾配における施工に際しては、各屋根スレート製造業者に確認を行う。
*2 最大流れ長さは、各屋根スレート製造業者に確認を行う。
  • 屋根スレートの施工は、設計風圧力に対する安全性を確認した施工法とする。
  • 屋根スレートの風に対する耐力および耐風施工法は製造業者の仕様による。下図は一般的な補強施工法の例である。
引用4
  • 「住宅屋根用化粧スレート葺き 屋根耐風性能 設計施工ガイドライン」(2002)p21(NPO法人住宅外装テクニカルセンター編集、発行)
標準工法と一般的な補強工法(引用5)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
引用5
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p142((社)日本建築学会編集、発行)
(3)
各部のふき方の例
①軒先のふき方(引用6)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
引用6
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p143((社)日本建築学会編集、発行)
②けらばのふき方(引用7)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
引用7
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p143((社)日本建築学会編集、発行)
③棟部のふき方(引用8)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
引用8
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p144((社)日本建築学会編集、発行)
  • 屋根材の上から棟包心木を固定釘で固定し、棟包心木に棟包を被せて役物固定釘で側面から棟包心木に固定する。(参考2)
参考2
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p143((社)日本建築学会編集、発行)
④隅棟部のふき方(引用9)
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
引用9
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p144((社)日本建築学会編集、発行)
  • 隅棟を棟包で納める場合は、屋根スレートの重なり部分に入った雨水が横走りをして隅棟芯に達しない様、屋根スレートの先端を隅切りする。(参考3)
  • 隅棟の棟包心木の際は、浸入した雨水の排出を阻害するため、シーリングを施さない。(参考3)
参考3
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p144((社)日本建築学会編集、発行)
(4)
スレートぶき工法の下地(参考4)
  • 木造小屋組は、構造用合板又は普通合板が用いられる。枠組壁工法では構造用合板を用いることが一般的である。
  • 鉄筋コンクリート造屋根版は、パーライトモルタル下地又は構造用合板、普通合板、硬質木片セメント板などが用いられる。
  • 鉄骨造小屋組は、硬質木片セメント板、構造用合板、普通合板などが用いられる。
参考4
  • 「建築工事標準仕様書・同解説」JASS12 屋根工事(2004年版)8節p140((社)日本建築学会編集、発行)

2.スレートの屋根からの漏水の発生原因

(1)
不適切な屋根の設計
屋根の設計段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、漏水につながることがある。
①屋根工法・材料の選択
②屋根の各部位の設計上の納まり
③屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
④下ぶきの工法・材料の選択
(2)
不適切な屋根の施工等
屋根の施工段階において、以下の事項に不適切な点がある場合は、漏水につながることがある。
①屋根材料・下ぶき材等の品質
②屋根の各部位・下ぶきの施工
③屋根勾配、排水ルート、樋の施工
(3)
不適切な使用・メンテナンス
居住者の使用・メンテナンスにおいて、以下の事項に不適切な点がある場合は、漏水につながることがある。
①屋根面の過度の歩行等
②設備機器の設置等
③樋等のメンテナンス
事前確認等
  • 0 事前確認等」によるほか、調査に先立ち「陸屋根からの漏水」の「0 事前確認等」に例示しているヒアリングシートを参考に居住者へのヒアリングを行う。
漏水の発生状況の確認

調査の視点

  • 屋根からの雨水の浸入による漏水は、浸入経路を特定することが容易でない場合が多いが、屋根面および取合い部に発生している割れ、欠損、ずれ等の状況を観察することにより、大まかに発生原因を推定することは可能である。
  • 屋根の直下階の天井面にあらわれた漏水は、必ずしも屋根からの浸入とは限らない場合もあり、外壁、軒等屋根面以外からの浸入の可能性も考慮して、調査を行う。また、小屋裏等の結露の可能性も考慮して、調査を行う。

調査方法

1.漏水発生部位の確認

(1)調査方法

  • 漏水(又は漏水によるしみ、はがれ等)が住戸内部のどの部分に発生しているかを目視にて確認する。必要に応じて、小屋裏点検口等より屋根下面の漏水の発生部分を目視にて確認する。
  • 屋根面および取合い部に割れ、欠損、ずれ等がないかを目視等により確認する。
  • 具体的には、高所観察用のビデオカメラの活用や、可能ならば屋根に登り目視等により確認する。
  • 部位ごとに確認する主な項目を以下に列記する。
①屋根面
  • 屋根スレート、軒板に割れ、欠損、ずれ等が生じていないか。特に他とは異なるすき間の発生や軒の直線のゆがみ、部分的に汚れたり、変色している箇所を中心に確認する。
  • 現場塗装仕上げの場合は、塗料が屋根スレートの重ね部小口をふさいでいないか。
  • けらば水切りの変形、ずれ等が生じていないか。
  • 棟、隅棟の棟包みに変形、ずれ等が生じていないか。
  • 下屋根と壁の取合い部(水平部分、勾配部分)の雨押さえに変形、ずれ等が生じていないか。
  • 谷際の屋根スレートに割れ、欠損、ずれ等が生じていないか。
  • 棟違い部の棟包みとけらば水切りの納まりにひび割れすき間などが生じていないか。
  • 軒先と外壁の取合い部で、流れ壁際の捨て谷を流れる雨水が軒樋等に誘導される構造になっているか。(参考5)
  • パッキン付の補強用ねじを屋根スレートに打ち込んでいる箇所は、ねじがゆるんでいないか、又はパッキンが破損していないか。
②天窓、壁の取り合い部分
  • 開口部の水切り部材と屋根材との間に明らかな隙間が生じていないか。
  • シーリング材に隙間が生じていないか。
③アンテナ、太陽熱温水器、太陽光発電システム等の脚部周辺
  • 機器荷重による屋根材の破損が起こっていないか。
  • 脚部等のシーリング等に劣化、欠損等がないか。
④樋回り
  • 軒樋にゴミなどによる詰まりが生じていないか。
  • 勾配の方向は正しくとられているか。竪樋のほうが低くなっているか。
  • 樋の変形・傾斜等が生じていないか。
参考5
  • 「まもりすまい保険設計施工基準・同解説(2012年版)第4版」p39(図7-7)(住宅瑕疵担保責任保険法人住宅保証機構(株)発行)

(2)注意事項等

  • 目視調査等は降雨時又は降雨の直後がわかりやすい場合もあるので、想定される漏水原因によって、調査日を検討する。
  • 居住者に確認をし、漏水時期等を把握しておくことも重要である。新築直後か、経過年数が長いか、又は漏水発生の直前に防水改修工事や設備機器設置等の工事を行ったか等を確認しておく。
  • 結露による漏水の発生も想定されるため、外部からの水の浸入であると判断せずに、漏水の発生した部屋等の使用状況(暖房、換気等)および小屋裏等の換気状況についても確認する。

調査結果の考え方

  • 屋根面および取合い部に割れ、欠損、ずれ等の隙間が確認された場合には、当該部が漏水原因の一つである可能性が高い。
  • 棟等の屋根頂部や谷部分又は軒先・けらば等の屋根端部に、欠損、ずれやシーリング材等の隙間が確認された場合には、屋根の棟・谷又は軒先・けらばの当該部が漏水原因の一つである可能性が高い。
  • 軒樋に詰まりや変形が生じている場合には、当該部が副次的な漏水原因の一つである可能性が高い。
  • 天窓等の開口部、壁との取合い部分、設備機器設置箇所の周辺に、ひび割れ、穴、はがれ、欠損、ずれ等の隙間が確認された場合には、これらの異種部材との接合・接触部分が漏水原因の一つである可能性が高い。
参考6
  • 「木造の詳細1構造編 新訂三版」(㈱彰国社編集、発行)
参考7
  • 「水にまつわるトラブルの事例・解決策(設備編)」(1994年) (「設備漏水」編集委員会著、学芸出版社㈱発行)

使用する検査機器

設計内容の確認

調査の視点

  • 屋根のスレートぶきの設計が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.屋根の設計内容の確認

確認のポイント
屋根工法・材料の選択
屋根の各部位の設計上の納まり
屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
下ぶきの工法・材料の選択

(1)調査方法

  • 設計図書(設計図、仕様書等)を対象として、屋根のスレートぶきの設計が適切に行われているかを確認する。なお、適切であるかの検討にあたっては、建設住宅性能評価関連図書等やメーカーの標準仕様書、その他の仕様書、基準等に照らして確認する。
  • <確認のポイント>に沿って確認する主な項目を示す。
    屋根工法・材料の選択
    • 屋根形状・勾配とスレートぶき工法との適合性
    • 屋根ふき材料の寸法・規格
    • 屋根下地(野地板、たる木等)の材料
    • シーリングの材料
    屋根の各部位の設計上の納まり
    • 棟、軒先、けらば、谷部等の納まりが適切に設計されているか。
    • 天窓等の開口部や壁との取合い部の水切り金物やシーリングの納まりが適切に設計されているか。
    • 屋根に取り付けられた設備機器等(参考8,参考9,参考10)の留付けが適切に行われているか。
    屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
    • 屋根勾配が適切か。屋根ふき材料に適した標準的な勾配となっているか。
    • 樋の排水のルート及び径が適切に設計されているか。
    下ぶきの工法・材料の選択
    • 下ぶきのふき方(重ね幅、立ち上げ高さ、増張り幅等)(参考11)
    • 下ぶき材の種類・規格(参考11)

(2)注意事項等

  • 特になし
参考8
  • 「既存住宅の瑕疵担保責任保険施工・検査基準(住宅用太陽電池モジュール設置工事編)」(2010)国土交通省住宅局ホームページ
参考9
  • 「住宅瑕疵担保責任保険[現場検査]講習テキスト(リフォーム瑕疵保険&既存住宅売買瑕疵保険)」(2010)(国土交通省住宅局、(一社)住宅瑕疵担保責任保険協会・発行)
参考10
  • 「住宅用太陽光発電システム設計・施工指針」平成19年3月(住宅用太陽光発電システム施工品質向上委員会編集)
参考11
  • 「木造住宅工事仕様書 平成28年版(第1版)」p115  6.2(住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行)

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について、適切な設計が行われていない場合は、屋根の防水対策上の配慮不足が原因で漏水につながっている可能性が高い。
    ①屋根工法・材料の選択
    ②屋根の各部位の設計上の納まり
    ③屋根勾配、排水ルート、樋の設置等
    ④下ぶきの工法・材料の選択

使用する検査機器

  • 特になし
施工状況等の確認

調査の視点

  • 屋根のスレートぶきの施工が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.書類による確認

確認のポイント
屋根材料・下ぶき材等の品質

(1)調査方法

  • 施工記録(施工計画書、工事状況報告書、工事写真等)及び建設住宅性能評価関連図書等により、把握できる範囲において屋根のスレートぶき工事が設計どおりに適切に行われているかを確認する
    • 屋根ふき材料の寸法・規格
    • 下ぶき材の規格
    • 屋根下地(野地板、たる木等)の材料
    • シーリングの材料

(2)注意事項等

  • 特になし

2.目視等による施工状況の確認

確認のポイント
屋根の各部位・下ぶきの施工
屋根勾配、排水ルート、樋の施工

(1)調査方法

  • 書類により確認した内容と実際の施工状況が一致しているか、不適切な施工が行われていないかを目視等により確認する。
  • 不適切な箇所が発見された場合には写真等で記録する。確認した結果を設計図書等と照らし合わせて確認する。
  • 必要に応じて、屋根ふき材の一部をはがし、ふき材の重ねしろ、下ぶき材の破れや重ね幅、屋根下地の留付け状況等を確認する。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について、設計どおりの施工が行われていない場合、又は不適切な施工が行われている場合は、スレートぶきの施工不良等が原因で漏水につながっている可能性が高い。
    ①屋根材料・下ぶき材等の品質
    ②屋根の各部位・下ぶきの施工
    ③屋根勾配、排水ルート、樋の施工
  • 「②屋根の各部位・下ぶきの施工」について、下ぶき材に破れが確認された場合、又は張る方向、重ね等が不適切な場合は、当該部が漏水の原因の一つである可能性が高い。

使用する検査機器

使用・メンテナンス状況の確認

4 使用・メンテナンス状況の確認」によるほか、以下の確認を行う。

調査の視点

  • 屋根が適切に使用されているかを確認する。
  • スレートぶきの勾配屋根は、歩行や重量物の積載を前提としていないため、過度の歩行等不適切な使用がされた場合は、漏水につながることがある。
  • 通常、屋根は人の目が届きにくいため、定期的なメンテナンスが行われていない場合は、樋等のつまり等により、排水不良につながることもある。

調査方法

1.使用状況等の確認

(1)調査方法

  • 事前確認等を参考にして、不適切な屋根の使用がされていないか、また、使用状況が適切かを目視等により確認する。
    ①屋根面の過度の歩行等の行為がなかったか。
    ②新たな設備機器の設置等の工事が行われていないか。
    ③樋等が落葉やゴミによってつまっていないか。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について不適切な点がある場合は、使用・メンテナンスの不良が原因で漏水につながっている可能性が高い。
    ①屋根面の過度の歩行等
    ②設備機器の設置等
    ③樋等のメンテナンス

使用する検査機器

  • 特になし
外的要因の確認

5 外的要因の確認」による。

詳細調査の必要性の検討

6 詳細調査の必要性の検討」による。