調査方法編

外壁開口部に係る遮音不良(外壁開口部からの透過音)

1.外壁開口部からの透過音とは

外壁からの透過音とは、外部騒音(※1)が外壁を透過して居室内に伝搬する空気伝搬音(※2)である。外部騒音に対する検討は、一般に外壁を構成する部位(※3)の中で、空気伝搬音遮断性能が低くかつ面積が大きい外壁開口部に設けられるサッシ及びドアセット(以下、『サッシ等』)の空気伝搬音遮断性能(※4、部位性能)について行われている。
下図に示すように、サッシ等からの透過音Leは、屋外での音圧レベルLs、サッシ等の空気伝搬音遮断性能である透過損失TL、サッシ等の面積S、受音室の吸音性能A等の要因が影響し、下式で表される。(参考1)
Le = Ls – TL + 10log(S/A)

外壁からの透過音の要因図(chord作成)
参考1
  • 「建築設計資料集成  環境 2007」p23 ((社)日本建築学会編)
品確法告示(参照1)では、サッシ等自体の部位性能である透過損失TLを対象とした「透過損失等級(外壁開口部)」を採用している。
ここでは、品確法告示に基づいて、居室の外壁開口部に設けられたサッシ等の透過損失等級を表示し、それが契約内容となっている住宅(外壁開口部の空気伝搬音遮断性能表示住宅)を対象とする。それ以外の場合は、空気伝搬音遮断性能に関する契約上の合意水準を契約内容等に応じ個別に判断して対応する必要がある。
品確法告示では外壁開口部の空気伝搬音遮断性能は、戸建住宅及び共同住宅等に適用される。
※1
外部騒音には、近隣の道路、鉄道、飛行場等からの伝搬音や屋外機器類の運転音等がある。(参考2)
※2
想定される紛争としては、外部騒音が聞こえて気になり、生活に支障が生じている居住者が音の測定を行い、外壁開口部の空気伝搬音遮断性能「透過損失等級(外壁開口部)」として表示された等級を満たしておらず欠陥であるというクレームが発生する場合などが考えられる。
※3
外壁を構成する部位には、サッシ等の他に換気口や設備用のスリーブ類、袖壁・腰壁があり、これらの部位からの透過音(側路伝搬音)の寄与もある。居住者には、サッシ等からの透過音と側路伝搬音とを合成した音が、外部からの騒音として認識される。
※4
「住宅の調査と補修 -平成28年度版
住宅紛争処理技術関連資料集-」のCD-ROMをご参照ください
参照1
品確法告示
  • 平13年国交告第1347号  評価方法基準  「第5の8 音環境に関すること8-4透過損失等級(外壁開口部) 」
参考2
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p140((社)日本建築学会編)


引用1
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p154((社)日本建築学会編)

2.発生原因

(1)不適切な外壁開口部の設計

外壁開口部の設計段階において、性能評価の対象となった設計内容説明書等に記載された仕様に適合する設計が行われていない場合には、契約内容として合意された外壁開口部の空気伝搬音遮断対策が講じられていないことがある。

(2)不適切な外壁開口部の施工等

躯体工事ならびにサッシ等の取り付け工事の段階において、設計内容説明書等に記載された仕様に適合する施工が行われていない場合には、契約内容として合意された外壁開口部の空気伝搬音遮断対策が講じられていないことがある。

(3)契約内容との不整合

外壁開口部の空気伝搬音遮断性能表示住宅において、性能評価の対象となった設計内容説明書等に対応する設計及び施工がなされていなかった場合には、契約上合意された外壁開口部への空気伝搬音遮断対策が講じられていないことがある。
また、東、西、南及び北の各方位の居室外壁の開口部に対して最低評価を抽出し、表示していない場合は、表示内容の誤りである。
なお、個別の居室の外壁開口部が契約上合意された空気伝搬音遮断仕様通りに施工されているか否かは、評価対象となった設計図書に記載されている当該居室の外壁開口部について実際の施工内容と照合することにより確認する必要がある。
事前確認等(不具合事象の程度の確認)

調査の視点

  • [音に関する不具合]の末尾に掲載の「事前調査シート」に基づくヒアリング又は現地調査により、発生している外壁開口部からの透過音等の程度を確認し、居住者が音に関する不具合を認識するに至った状況を整理する。
  • 音に関する何らかの測定を行っている場合には、何を対象としてどのような方法により測定が行われたのか確認する。

調査方法

1.外壁開口部からの透過音の程度の確認

外壁開口部からどのような透過音が聞こえるのかを確認する。具体的方法としては、事前調査シートによる居住者へのヒアリングや現地調査等により程度を確認する。

(1)調査方法

居住者に対して、事前調査シートの質問項目にそった状況の記入を依頼し、外壁開口部からの透過音等の発生状況(発生条件、程度、時間、その他の関連する要因)を確認する。
可能であれば現地において、外壁開口部からの透過音について、透過音の種類や音圧レベル等を調査する。
調査対象室の暗騒音レベルが高く対象音がはっきりと聞き取れない場合には、外壁開口部からの透過音等の状況を正しく認識できないので、可能であれば暗騒音レベルが低くなり対象音が暗騒音と比べて10dB以上大きく、はっきり聞き取れるような時間帯にも調査する。(参考3)
参考3
  • 「JIS Z8731:1999環境騒音の表示・測定方法」p15((一財)日本規格協会

(2)注意事項等

  • 音のうるささに対する感覚は個人差が大きいため、状況確認の段階では、音のうるささ等に関するコメントは避け、事実確認のみを行うこと。
  • 指摘された透過音を聴感により確認するとともに、その音が発生している状態の室内音を、騒音計によるA特性音圧レベルの測定(参考4)などにより定量的な確認を行うことが望ましい。必要に応じて専門家に音の調査を依頼する。
参考4
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」P425~437,p438~447
    ((社)日本建築学会編)

2.性能測定状況の確認

音に関する何らかの測定が既に行われている場合には、その性能測定の状況を確認する。
確認のポイント
 (測定内容の確認)
準拠した規格等(JIS等の基準に準拠した測定方法か)
JIS A 1430:2009「建築物の外周壁部材及び外周壁の空気音遮断性能の測定方法」
JIS A 1520:1988「建具の遮音試験方法」
日本建築学会推奨測定規準D.2「建築物の現場における内外音圧レベル差の測定方法」(参考5)
測定された部位・性能(外壁開口部を介する内外音圧レベル差などを測定しているか)
外壁開口部の状態(閉鎖した状態で測定しているか)
サッシ等は閉め(クレセントも閉める)、換気口の蓋も閉じて測定する。
測定機関
音源スピーカを用いた測定方法の場合は、スピーカの設置位置、音源側及び受音側の測定位置
実騒音を用いた場合は、室内外での同時測定の方法
測定機器の仕様、雑音発生装置の仕様
測定時の受音室の状況(家具・什器などの設置状況)
測定時のその他の状況(暗騒音の程度)など



参考5
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p378~402((社)日本建築学会編)

(1)調査方法

  • 居住者に測定結果報告書等の資料を提出してもらい、その実施状況・結果を確認する。また、可能であれば、測定機関へ問い合わせを行い、ヒアリングにより、実施状況を詳細に確認する。

(2)注意事項等

  • 多種の現場測定方法がある。どの測定法を採用したのか、測定された空気伝搬音遮断性能は何かを確認する。
  • 実騒音法では外部騒音の音圧レベルが大きくない周波数においては、室内側の測定値が暗騒音の影響を受けるので、空気伝搬音遮断性能が小さく評価されてしまう。
  • 内外の騒音レベルの差は、透過損失等級(外壁開口部)の評価対象であるRm(1/3)平均音響透過損失(※5)または遮音等級線(※6)の500Hzに該当する値(T-1が25dB、T-2が30dB、T-3が35dB、T-4が40dB)に対応するものではない。
※5
JIS A 1419-1「建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法-第1部:空気音遮断性能」の「付属書2(参考)建築物及び建築部材の空気音遮断性能の平均値による評価」で規定する方法によって求める。
※6
JIS A 4706「サッシ」に遮音等級線と音響透過損失から遮音等級を求める方法が規定されている。

3.性能表示内容の確認

性能表示内容を確認する。

(1)調査方法

居住者に建設住宅性能評価書を提出してもらい、その評価内容、登録住宅性能評価機関を確認する。
必要に応じ登録住宅性能評価機関等に対するヒアリングや住宅紛争処理支援センター経由で評価に要した資料の提出要求を行い、評価した内容を詳細に確認する。

(2)注意事項等

  • 性能評価はあくまでも対策上の仕様を評価するものであり、完成した住宅居室内で聞こえる音を評価しているものではないことに注意する。

調査結果の考え方

  • 事前確認の段階では、音環境に対する性能測定の状況や評価内容の確認にとどめ、以降の調査を進める。
  • 外壁開口部を透過して侵入する外部騒音は、設計・施工上の不具合に関わらず、音の発生時刻や居室の暗騒音レベルなどの様々な要因に左右される(※7)ので、居住者が音に関する不具合を認識するに至った状況等を十分に確認しておくことにより、問題の所在が明らかになりやすい。
  • 音に関する不具合が発生した場合に、測定によって建物の遮断性能を確認することは、一つの参考となり得る。測定値はいろいろな要因(※8)によって「値のばらつき」が生じるものであるため、測定値のみによって不具合の原因等を特定することは極めて難しい。
    性能表示制度における外壁開口部の透過損失等級に要求される水準は、サッシ等だけを評価対象としている。その他の外壁構成材からの透過音の影響が無いとした特定の条件において、施工・測定等のばらつきを考慮した上で一定の水準となるよう、必要な対策を講じているかどうかを評価するもので、実際の住居における透過音の実測値とは直接対応するものではないことに注意する。
※7
一般的に外部騒音が低くなる夜中は特に気になりやすい。定常騒音より変動騒音や間欠騒音の方が気になりやすい。
※8
測定機器の誤差、測定技術の熟練度、測定条件の設定、室内の状況(家具、什器等の設置状況)など


使用する検査機器

  • 騒音計(オクターブバンドフィルター付き)
外壁開口部の設計内容の確認

  • 評価対象となった設計内容説明書等に記載された仕様に適合するものであるかどうかを確認する。

調査方法

1.外壁開口部の性能表示内容の確認

設計住宅性能評価の対象となった設計内容説明書等の内容及び評価結果を確認する。
確認のポイント
サッシ等の指定試験機関による音響透過損失の試験成績書
サッシ等のガラス厚、構成等
サッシ等の枠が同じ型式でも厚さの異なるガラスや複層ガラスが用いられているとそのサッシ等の透過損失は異なる。

(1)調査方法

  • 対象外壁開口壁の評価方法を確認する。
  • 設計内容説明書等を用いて、上記<確認のポイント>に沿って、ガラス厚や構成に違いが無いことなどを確認する。

(2)注意事項等

  • ガラス厚の違いで特定の周波数(※9)において遮音性能が低下するので、厚いガラスを用いたサッシ等の空気伝搬音遮断性能が高い性能になるとは限らない。
  • 複層ガラスの場合は、中空層の共鳴による特定周波数(※10)において遮音性能が低下するので、二重構造であっても空気伝搬音遮断性能が高い性能になるとは限らない。
参照2
品確法告示
平13年国交告第1347号
評価方法基準
「第5の8 音環境に関すること8-4透過損失等級(外壁開口部)」
※9
コインシデンス周波数といい、板材料の遮音性能(音響透過損失)が特定の周波数で質量則(板状材料の遮音性能の基本的な特性で、一定の周波数において単位面積あたりの材料の重量が大きいほど遮音性能は大きくなる)で与えられる値に比べて著しく低下する現象。(参考6)
※10
低音域共鳴透過周波数といい、二重壁や二重窓など2枚の板材料の間に空気層を設けた二重壁構造で特定の周波数で遮音性能が低下する現象。(参考7)
参考6
新版 音響用語辞典「コインシデンス効果」p115(2003)((社)日本音響学会編

参考7
新版 音響用語辞典「共鳴透過」p95(2003)((社)日本音響学会編

調査結果の考え方

  • 性能評価の対象となる外壁開口部の設計仕様は、評価基準上示されている仕様又は基準に適合する測定方法により性能を検証した仕様とする必要がある。よって、当該仕様等と実際の設計仕様等が異なる場合は、設計住宅性能評価申請内容と実際の設計内容が異なっているか、又は申請内容自体の誤りのいずれかと考えられる。


使用する検査機器

  • 特になし
外壁開口部の施工状況等の確認

調査の視点

  • 対象となる外壁開口部に適用されたサッシ等が評価基準に適合する仕様、施工方法により施工されているかを確認する。
  • 設計内容説明書等に適合する仕様、施工方法により当該サッシ等が施工されているかを確認する。

調査方法

1.書類による確認

設計住宅性能評価の対象となった設計内容説明書等に記載されたサッシ等の製品が施工されているかを確認する。
確認のポイント
サッシ等の製品
ガラス厚、仕様
取り付け方位・向き

(1)調査方法

  • 施工記録等(施工図、工事状況報告書、工事写真等)により上記<確認のポイント>に沿って、把握できる範囲において対象外周壁及び開口部に取り付けられたサッシ等の施工内容を確認する。

(2)注意事項等

  • 評価対象のサッシ等以外の部位の空気伝搬音遮断性能が十分でない場合は、外部からの透過音に対する苦情が生じる。空気伝搬音遮断性能が不十分な部位としては、換気口や設備用のスリーブがある。

2.目視等による施工状況等の確認

(1)調査方法

  • 設計住宅性能評価の対象となった設計内容説明書等に記載された設計仕様と実際の施工状況が一致しているか、不適切な施工が行われていないかを、目視・測定等により確認する。
  • 不適切な箇所が発見された場合には、写真等で記録をとる。確認した結果を、設計図書(図面、仕様書)等と照らし合わせて対応性を検証する。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について、設計通りの施工が行われていない場合、又は不適切な施工が行われている場合は、外壁開口部に空気伝搬音遮断性能上の不良が発生している可能性が高い。
    サッシ等の製品
    ガラス厚、仕様
    サッシ等の取り付け方位・向き
    サッシ等の枠への障子の取り付け状態

  • 外壁開口部に取り付けられたサッシ等の施工内容が、外壁開口部からの透過音対策に関する評価基準に該当する仕様(すなわち性能評価の対象となった設計内容説明書等の仕様)と異なる場合は、外壁開口部に契約内容として合意された外部からの透過音を遮断するための対策が講じられていない可能性が高い。


使用する検査機器

使用・メンテナンス状況の確認

4 使用・メンテナンス状況の確認」による。

外的要因の確認

5 外的要因の確認」による。

詳細調査の必要性の検討

6 詳細調査の必要性の検討」による。