調査方法編

界床に係る遮音不良(床歩行音等の床衝撃音)

1.床歩行音等の床衝撃音とは

床歩行音(※1)等の床衝撃音は、音の種類で分類すると「重量で柔らかい衝撃源によって発生する音」と位置付けられる重量床衝撃音である(※2)。床衝撃音とは、床に対する衝撃的加振力によって下室(受音室)に発生する音であり、床衝撃音レベルは、衝撃源の衝撃力特性、床構造の振動特性、下室の音響特性の三要因に依存している。対象とする床がこの種の衝撃音に対し、どの程度の遮断能力を有するかを調べる方法としては、標準重量衝撃源(重量床衝撃音発生器)を用いる床衝撃音遮断性能の測定方法(JIS A 1418-2)がある。
なお、ここでは、性能表示制度に基づいて重量床衝撃音対策の程度を表示し、それが契約内容となっている住宅(重量床衝撃音遮断性能表示住宅)を対象とする。それ以外の場合は、遮断性能に関する契約上の合意水準を契約内容等に応じ個別に判断して対応する必要がある。
※1
人のとびはねや走り回り時等に床に及ぼす衝撃力は、その絶対値が大きくかつ低音域にピークを有する特性を持つ。よってコンクリート床上に直接カーペットを敷いたような床は、カーペットが床衝撃時に圧密され硬くなり、衝撃に対して緩衝性を発揮できず、床衝撃音はほとんど改善されない。一方、軽くて硬いスプーンやフォークなどの落下時の衝撃力は小さく高音域まで成分を有するため、カーペット等の床表面材の緩衝効果が働き、大きな床衝撃音改善量を得ることができる。よって軽量床衝撃音の性能は床仕上材の緩衝性に依存するところが大きい。
※2
想定される紛争としては、重量床衝撃音遮断性能表示住宅において、床歩行音等が気になる居住者が性能測定を行い、重量床衝撃音対策として表示された等級を満たしておらず欠陥であるというクレームが発生する場合などが考えられる。
参考1
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p29、p47((社)日本建築学会編集)
参考2
  • 「建築設計資料集成・環境」p34~37((社)日本建築学会編集)

2.発生原因

(1)
不適切な界床(※3)の設計
界床の設計段階において、性能評価の対象となった設計内容説明書等に記載された仕様に適合する設計が行われていない場合には、契約内容として合意された重量床衝撃音遮断対策が講じられていないことがある。
※3
以下、界床とは受音室(台所以外)と上階との界床を指す。
(2)
不適切な界床の施工等
躯体工事ならびに床仕上げ工事の段階において、設計内容説明書等に記載された仕様に適合する施工が行われていない場合には、契約内容として合意された重量床衝撃音遮断対策が講じられていないことがある。
(3
契約内容との不整合
重量床衝撃音遮断性能表示住宅において、性能評価の対象となった設計内容説明書等に対応する設計及び施工がなされていなかった場合には、契約上合意された重量床衝撃音遮断対策が講じられていないことがある。
また、全居室の界床の評価結果から最低及び最高評価を適切に抽出して表示していない場合は、表示内容の誤りである。
なお、個別の居室の床が契約上合意された遮音仕様通りに施工されているか否かは、評価対象となった設計図書に記載されている当該居室の床構造・床仕上げ構造仕様と実際の施工内容との照合により確認する必要がある。
事前確認等(不具合事象の程度の確認)

調査の視点

  • [音に関する不具合]の末尾に掲載の「事前調査シート」に基づくヒアリング又は現地調査により、発生している床歩行音等の程度を確認し、居住者が音に関する不具合を認識するに至った状況を整理する。
  • 音に関する何らかの測定を行っている場合には、何を対象としてどのような方法により測定が行われたのか確認する。

調査方法

1.床歩行音等の程度の確認

どの程度の床歩行等の音であるかを確認する。具体的方法としては、事前調査シートによる居住者へのヒアリングや現地調査等により程度を確認する。

(1)調査方法

居住者に対して、事前調査シートの質問項目にそった状況の記入を依頼し、床歩行音等の発生状況(発生条件、程度、時間、その他の関連する要因)を確認する。
可能であれば現地において、床歩行等により発生する音について、受音室での発生音の程度を調査する。
調査対象室の暗騒音が大きい場合には、床歩行音等の状況を正しく認識できないので、可能であれば暗騒音が低くなり、特に対象音がうるさく感じられるような時間帯にも調査する。

(2)注意事項等

  • 音のうるささに対する感覚は個人差が大きいため、状況確認の段階では、音のうるささ等に関する直感的なコメントは避け、事実確認のみを行うこと。これには、騒音計によるA特性音圧レベルの測定などにより定量的な確認を行っておくとよい。

2.性能測定状況の確認

音に関する何らかの測定が既に行われている場合には、その性能測定の状況を確認する。
確認のポイント
(測定内容の確認)
準拠した規格等(JISの公的基準に準拠した測定方法か)
JIS A 1418-2-2000「建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法―第2部:標準重量衝撃源による方法」
測定された部位・性能(建築物の現場における床衝撃音レベル:JIS A 1418-2-2000に規定する「衝撃力特性Ⅰ」の標準重量衝撃源で測定しているか)
測定機関
衝撃点及び受音点の設定位置
測定機器の仕様、重量衝撃音発生装置の種類・仕様
測定時の受音室ならびに上階の状況
測定時のその他の状況(暗騒音の程度)など

(1)調査方法

  • 居住者に測定結果報告書等の資料を提出してもらい、その実施状況・結果を確認する。また、可能であれば、測定機関へ問い合わせを行い、ヒアリングにより、実施状況を詳細に確認する。

(2)注意事項等

  • 重量衝撃源は内部空気圧に依存する衝撃源であるため、測定結果報告書やヒアリングを通して、適正に設定されていたことを確認する。
参考3
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p403((社)日本建築学会編集)

3.性能表示内容の確認

性能表示内容を確認する。

(1)調査方法

居住者に建設住宅性能評価書を提出してもらい、その評価内容、登録住宅性能評価機関を確認する。
必要に応じ登録住宅性能評価機関等に対するヒアリングや住宅紛争処理支援センター経由で評価に要した資料の提出要求を行い、評価した内容を詳細に確認する。

(2)注意事項等

  • 性能評価はあくまでも仕様上の対策を評価するものであり、完成した住宅居室内で聞こえる音を評価しているものではないことに注意する。

調査結果の考え方

  • この段階では、音環境に対する性能測定の状況や評価内容の確認にとどめ、以降の調査を進める。
    • 上階で居住者の発生させる音が下階の居住者に及ぼす心理的影響は、設計・施工上の不具合に関わらず、音の発生時刻や居室の暗騒音レベル、上階の居住者との人間関係などの様々な要因に左右される(※4)ので、居住者が音に関する不具合を認識するに至った状況等を十分に確認しておくことにより、問題の所在が明らかになりやすい。
    • 音に関する不具合が発生した場合に、測定によって建物の遮断性能を確認することは、一つの参考となり得るが、測定値はいろいろな要因(※5)によって「値のばらつき」が生じるものであるため、測定値のみによって不具合の原因等を特定することは極めて難しい。
      なお、性能表示制度における床衝撃音対策の各等級に要求される水準についても、「床構造・受音室を拡散曲げ振動場・拡散音場とした場合」等の特定の条件において、施工・測定等のばらつきを考慮した上で一定の水準となるよう必要な対策を講じているかどうかを評価するものであるため、実際の住居における実測結果値とは直接対応するものではないことに注意する必要がある。
    • 重量床衝撃音遮断性能の表示を実施している場合には、「重量床衝撃音対策等級」による表示であるか、「相当スラブ厚(重量床衝撃音)」による表示であるかを確認し、以降の調査においては、評価対象、すなわち契約内容となった仕様との相違点の有無を順次確認する。
    ※4
    暗騒音が低い夜中は特に気になりやすい/上階の人と日常の交流が少ないほど気になりやすい/自分の出せない種類の音ほど気になりやすい など
    ※5
    測定機器の誤差、測定技術の熟練度、測定条件の設定、室内の状況(家具、什器等の設置状況)など

使用する検査機器

  • 騒音計(オクターブバンドフィルター付き)
界床の設計内容の確認

調査の視点

  • 評価対象となった設計内容説明書等に記載された仕様に適合するものであるかどうかを確認する。

調査方法

1.界床の性能表示内容の確認

設計住宅性能評価の対象となった設計内容説明書等の内容及び評価結果を確認する。まず、「重量床衝撃音対策等級」による表示か、「相当スラブ厚(重量床衝撃音)」による表示かを確認する。

確認のポイント
「重量床衝撃音対策等級」による表示の場合
評価方法(評価基準によるものか、特別評価方法認定によるものか)
評価基準による場合には以下の事項
  • スラブの構法
  • 床仕上げ構造の種類・仕様
  • 床構造の端部拘束条件、等価厚さ、受音室の面積
  • 等級換算スラブ厚(等級換算スラブ厚を用いた等級判定手法を採用している場合)(※6)
特別評価方法認定によるものの場合は認定番号等
※6
平成28年4月1日施行の評価方法基準の改正において、等級換算スラブ厚を用いた簡易な等級判定手法が導入されている。これは、従来の重量床衝撃音対策等級の代わりに、簡略化して対策等級を求める方法である。(引用1)

確認のポイント
「相当スラブ厚(重量床衝撃音)」による表示の場合[RC造の場合]
評価の根拠(床仕上げ構造の重量床衝撃音レベル低減量(ΔL)の設定が測定によるものか、基準上のみなし仕様によるものか)
測定による場合は、測定方法、測定機関、測定番号
みなし仕様による場合は、床仕上材料、施工方法を確認し、適切なΔL(5dB、0dB又は-5dB)が入力値として設定されているか
床構造の等価厚さの算出根拠(均質単板スラブ以外の場合、床構造の面密度、ヤング率、断面二次モーメント)
相当スラブ厚が適切な方法で算定されているか(入力値、計算過程、結果)
仕様に基づく計算によるものの場合には界床の相当スラブ厚の算出根拠(さらにΔLが測定によるものの場合は測定方法、測定番号)
仕様に基づく計算によるものの場合には計算値
仕様によるものの場合には床仕上材、施工方法等

(1)調査方法

「重量床衝撃音対策等級」による表示の場合
  • 対象界床の評価方法を確認する。
  • 設計内容説明書等を用いて、上記<確認のポイント>に沿って、床構造(スラブの構法、面密度、ヤング率、端部拘束条件等)及び床仕上げ構造の種類・仕様・物性値・施工方法等を確認する。
「相当スラブ厚(重量床衝撃音)」による表示の場合
  • 対象界床の評価方法を確認する。
  • 設計内容説明書等を用いて、上記<確認のポイント>に沿って、床構造(面密度、ヤング率、断面二次モーメント)、床仕上げ構造の種類・仕様・物性値・施工方法等を確認する。

(2)注意事項等

  • 特になし
品確法告示
平13年国交告第1347号評価方法基準「第5の8 音環境に関すること」

引用1
  • 「住宅性能表示制度日本住宅性能表示基準・評価方法基準技術解説(新築住宅)2016」p411 (国土交通省住宅局住宅生産課、国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人建築研究所監修/(一財)日本建築センター編集、工学図書(株)発行)

調査結果の考え方

  • 重量床衝撃音対策等級による表示の場合、性能評価の対象となる床構造及び床仕上げ構造の設計仕様並びに受音室の面積は、各重量床衝撃音対策等級に該当する界床の構法及び床仕上げ構造に応じた端部拘束条件・等価厚さ・受音室の面積(床仕上げ構造の仕様は、評価基準上示されている仕様又は基準に適合する測定方法により性能を検証した仕様)とする必要がある。よって、当該仕様等と実際の設計仕様等が異なる場合は、設計住宅性能評価申請内容と実際の設計内容が異なっているか、又は申請内容自体の誤りのいずれかと考えられる。
  • 相当スラブ厚による表示の場合、性能評価の対象となる相当スラブ厚は、評価基準上に定められている算出方法により求めた値とする必要がある。よって、当該相当スラブ厚と実際の設計仕様に基づいて算出した値が異なる場合は、設計住宅性能評価申請内容と実際の設計内容が異なっているか、又は申請内容自体の誤りのいずれかと考えられる。

使用する検査機器

  • 特になし
界床の施工状況等の確認

調査の視点

  • 対象界床に適用された床構造、床仕上げ構造が評価基準に適合する仕様、施工方法により施工されているかを確認する。
  • 設計内容説明書等に適合する仕様、施工方法により当該界床が施工されているかを確認する。

調査方法

1.書類による確認

設計住宅性能評価の対象となった設計内容説明書等に記載された床構造・床仕上げ構造の仕様と一致するよう施工されているかを確認する。
確認のポイント
(床の構造)
構法
断面形状
スラブの端部拘束条件[重量床衝撃音対策等級による表示の場合]
等価厚さ(面密度・ヤング率、断面二次モーメント)
受音室面積
(床仕上材の仕様、施工方法)
種類・仕様(厚さ、面密度、発泡倍率、対応する型式、JIS規格、JAS規格等)
施工方法

(1)調査方法

  • 施工記録等(施工図、工事状況報告書、工事写真等)により上記<確認のポイント>に沿って、把握できる範囲において対象受音室の床構造・床仕上げ構造の施工内容を確認する。

(2)注意事項等

  • 床仕上げ構造の室周辺の施工方法は性能に大きく影響する。そのため設計内容説明書と実際との対応性を詳細にチェックする。

2.目視等による施工状況等の確認

(1)調査方法

  • 設計住宅性能評価の対象となった設計内容説明書等に記載された設計仕様と実際の施工状況が一致しているか、不適切な施工が行われていないかを、目視・測定等により確認する。
  • 不適切な箇所が発見された場合には、写真等で記録をとる。確認した結果を、設計図書(図面、仕様書)等と照らし合わせて対応性を検証する。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 次のいずれかの事項について、設計通りの施工が行われていない場合、又は不適切な施工が行われている場合は、重量床衝撃音遮断性能に不良が発生している可能性が高い。
    (床の構造)
    構法
    断面形状
    スラブの端部拘束条件[重量床衝撃音対策等級による表示の場合]
    等価厚さ(面密度・ヤング率、断面二次モーメント)
    受音室面積
    (床仕上材の仕様、施工方法)
    種類・仕様(厚さ、面密度、発泡倍率、対応する型式、JIS規格、JAS規格等)
    施工方法
  • 床構造及び床仕上げ構造の施工内容が重量床衝撃音対策に関する評価基準に該当する床構造・床仕上げ構造の仕様(すなわち性能評価の対象となった設計内容説明書等の仕様)と異なる場合は、界床に契約内容として合意された重量床衝撃音を遮断するための対策が講じられていない可能性が高い。

使用する検査機器

使用・メンテナンス状況の確認

4 使用・メンテナンス状況の確認」による。

外的要因の確認

5 外的要因の確認」による。

詳細調査の必要性の検討

6 詳細調査の必要性の検討」による。

(参考)遮音性能の実測結果と生活実感の対応

「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版」 p28
表「表示尺度と住宅における生活実感との対応の例」((社)日本建築学会編集)
遮音等級 床衝撃音
人の走り回り、飛び跳ねなど 椅子の移動音、物の落下音など 生活実感、プライバシーの確保
L-30
  • 通常ではまず聞えない
  • 聞えない
  • 上階の気配を全く感じない
L-35
  • ほとんど聞えない
  • 通常ではまず聞えない
  • 上階の気配を感じることがある
L-40
  • かすかに聞えるが、遠くから聞える感じ
  • ほとんど聞えない
  • 上階で物音がかすかにする程度
  • 気配は感じるが気にならない
L-45
  • 聞えるが、意識することはあまりない
  • 小さく聞える
  • 上階の生活が多少意識される状況
  • スプーンを落とすとかすかに聞える
  • 大きな動きはわかる
L-50
  • 小さく聞える
  • 聞える
  • 上階の生活状況が意識される
  • 椅子を引きずる音は聞える
  • 歩行などがわかる
L-55
  • 聞える
  • 発生音が気になる
  • 上階の生活行為がある程度わかる
  • 椅子を引きずる音はうるさく感じる
  • スリッパ歩行音が聞える
L-60
  • よく聞える
  • 発生音がかなり気になる
  • 上階住戸の生活行為がわかる
  • スリッパ歩行音がよく聞える
L-65
  • 発生音がかなり気になる
  • うるさい
  • 上階住戸の生活行為がよくわかる
L-70
  • うるさい
  • かなりうるさい
  • たいていの落下音ははっきり聞える
  • 素足でも聞える
L-75
  • かなりうるさい
  • 大変うるさい
  • 生活行為が大変よくわかる
  • 人の位置がわかる
  • すべての落下音が気になる
  • 大変うるさい
L-80
  • うるさくて我慢できない
  • うるさくて我慢できない
  • 同上
備考 低音域の音、重量・柔衝撃源 高音域の音、軽量・硬衝撃源 生活行為、気配での例
(注1) 本表は室内の暗騒音を30dBA程度と想定してまとめたものである。暗騒音が20~25dBAの場合には、1ランク上に寄ると考えたほうがよい。
特に、遮音等級がL-30~L-45の高性能の範囲では、暗騒音の影響が大きく、2ランク程度上に寄る場合もある。
(注2) 住宅性能表示制度における床衝撃音対策の各等級に要求される水準については、「床構造を拡散曲げ振動場、受音室を拡散音場とした場合」等の特定の条件において、施工・測定等のばらつきを考慮した上で一定の水準となるよう必要な対策を講じているかどうかを評価するものであるため、実際の住戸における実測値と直接対応するものではないことに注意する必要がある。 
(注3) 住宅性能表示制度では、JIS A 1419(2000年改正)による表示値(LirL、LirH)に基づいているが、本表では改正以前のJIS A 1419による表示値に基づいている。