調査方法編

設備からの騒音

1.設備からの騒音とは

設備から発生する騒音は大きく分けて、器具類等からの騒音と配管類からの騒音とがある。器具類からの騒音には、給排水設備では、水栓類からの騒音、浴槽・流し・便器などの流出水音のほか、気泡浴槽、ディスポーザーなどの運転音がある。換気や冷暖房設備では、装置のファン運転音及び屋外機の騒音などがある。配管類等からの騒音は、給水・給湯管の流水音やウォーターハンマ音、排水管の流下音、ダクトなどの吹出し音などがある。

2.設備からの騒音の発生原因

  • 集合住宅における設備からの騒音の発生源とその原因を整理すると以下のようになる。
設備からの騒音の種類
発生部位
発生音の種類
器具類 水栓類・ボールタップ・弁類等 水栓開閉音・電動弁類作動音
浴槽・洗面・流し等のトラップ 排水口の吐出音
便器等 便器洗浄音
気泡浴槽 ブロア音
ディスポーザー 粉砕音・振動
換気扇 ファン騒音・吹出し騒音
エアコン ファン騒音・コンプレッサ騒音・屋外機騒音
給湯機 着火音・ポンプ回転音
給水ポンプ ポンプ回転音・キャビテーション(※)
配管類 給水管 流水音・ウォータハンマ音
排水管 流水音・排水の流下音・異物落下音
ダクト 気流音・吹出し音・ダクト支持部分の振動
キャビテーション:流速の増加や渦の形成などによって圧力が局部的に低下し気泡が発生する現象をいい、給水ポンプなどの吸い込み側で発生することがあり騒音が発生する。
参考1
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p54、p119((社)日本建築学会編)
(1)
給水系による騒音
給水系で生ずる騒音の大部分は水栓・ボールタップ類等の給水器具が原因となっている。これは水栓類を開放した時の水流による駆動力やキャビテーション及び急閉止によるウォータハンマ等が振動発生の原因となり、給水管の振動が、配管と建物の接触部分から壁や床に伝わり、固体音として建物に広がるほか、管中の水を媒体としても伝搬し、給水系統を同じくする管の他の場所からも建物に振動を伝える。従って、間取りと配管設計は、給排水騒音防止の観点からも慎重に行う必要がある。
発生騒音の程度は、給水圧力、管内流速及び水栓類の構造自体に関係している。給水騒音の発生と給水圧力についての定量的な相関については、未だ十分な知見が固まっていないが、通常の場合、給水圧力0.5MPa以上の場合には、給水圧力が強すぎるために給水騒音が発生する可能性が高くなる。
水栓類を原因とする給水系の騒音は、給水圧力・流速・水栓類の構造等に関係している一方で、その発生騒音が固体伝搬音として伝わる経路が遮断されていないことに大きく起因する。従って、給水配管が壁・床に埋め込まれている場合は、給水騒音が発生する可能性が高くなる。また、支持金物を通じての固体伝搬によっても騒音が生じることがある。建物や配管の状況によっては、騒音発生住戸の隣戸及び上・下階ばかりでなく、上・下数フロア先まで影響を及ぼすこともある。
参考2
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p81,74((社)日本建築学会編)
(2)
排水系による騒音
排水系で生ずる騒音で代表的なものには次のようなものがある。
  • トイレでの行為音
  • 便器の洗浄音
  • 排水管からの流水音(透過音)
  • 汚水の落下音
トイレでの行為音は小さい音であっても受音側にとっては不快な音であるため問題になる場合がある。
便器の洗浄音は、洗浄水の流れにより直接音源室内に放射される空気伝搬音と洗浄水の流れによる振動が床から他住戸へ伝搬される固体伝搬音とがある。
排水管の流水音は、排水管及びパイプシャフトの壁を透過して室内に放射される影響が大きい。したがって、便所排水立て管が便所内に露出していたり、あるいは収められているパイプシャフトの音に対する遮断性能が不十分である場合には給排水騒音に対するクレームが高くなる。汚水の落下音は、主として高層住宅の立て管最下部で問題になる場合が多い。
(3)
ダクトによる騒音
換気設備や冷暖房設備から発生するファンなどの騒音がダクトの気流に運ばれてグリルを通して室内に発散される気流音や、ダクトの風速や風圧による振動が支持材を通して、天井などの内装材に伝搬する固体伝搬音などがある。回転部を有する装置の防振やダクト支持金具の防振を考慮することが必要である。
(4)
配管類における平面計画上の配慮不足による騒音
騒音低減を考慮した平面計画とは、基本的に静かな環境を要求される居室(居間、寝室等)から騒音源となるものを遠ざけるということになる。ダクト等は居室に直接必要な設備であるため別だが、給排水系の配管類などの音源は騒音源とならないように、下記のような平面計画的配慮が必要である。
パイプシャフトの位置
パイプシャフト、特に便所用給排水管が入るシャフトが共用廊下等の住戸外になく、居室(居間、寝室等)に隣接しているなど、排水立て管と居室の距離が近接していると、給排水騒音に対するクレームが高くなる。
設備コアの位置
水廻り(便所・浴室等)がばらばらに配置され平面的にあるいは上下階において居室に隣接していたり、あるいは設備コアとなっていても、コアが平面的に居室に隣接していたり、上下階におけるコアの位置が同一でない場合などは、給排水騒音に対するクレームが高くなる。
ただし、遮音上有効な対策が取られている場合は問題が無い場合もある。
便器の設置
便器を隣戸との界壁または界壁近くの壁に直接取り付けた場合には、給排水騒音に対するクレームが高くなる。
参考3
  • 「給排水衛生設備における騒音・振動低減設計・施工」p18((社)空気調和・衛生工学会発行)
(5)
設備機器等からの振動による騒音
設備機器等からの振動は、設備機器等の振動が置床等に入力し、建物躯体を伝搬して居室などにおいて体感振動、あるいは居室の内装材が振動することによって発生する固体伝搬音として影響を与えるが、多くの場合固体伝搬音の影響によって次に示す音響障害(参考4)を生じている。
設備機器が、回転機器であれば回転部の不つり合いによる不平衡力によって、また、往復動機器であれば往復稼動部の慣性力によって加振力を生じる。この加振力が、設備機器などに振動を発生させる。
設備機器が直接床に設置されていれば、加振力は設置床に直接入力し、また、防振材を介して設置されていれば、防振材による防振効果の影響を受けた力が設置床に入力される。その際、設置床に発生する振動は、設置床の剛性(振動入力特性)によって異なる。
設置床に発生した振動は、建物の構造躯体などを伝搬し、居室躯体に到達するが、構造躯体の種類、寸法、形状、伝搬する距離などによって到達量は異なる。建物の構造躯体では、柱、はり、床スラブ、壁を主に曲げ波として伝搬する。したがって、主に床スラブ、壁などの面外の振動に着目する必要がある。
居室躯体に到達した振動は、下地材などを介して内装材に伝わり、固体伝搬音となって居室内に放射される。
参考4
  • 「図解 空調・給排水の大百科」p586,587((社)空気調和・衛生工学会編、(株)オーム社発行)

3.設備騒音の低減方策

主として集合住宅では、設備機器類が発生する騒音が原因で、配管や躯体を伝わる固体伝搬音となって音源住戸や隣戸に放射されることから、騒音対策を考える上では建築的な平面・断面計画に留意する必要がある。特に給排水設備に係る設備計画に留意した設計・施工が必要になる。(1)~(3)に給排水設備に係る騒音低減の方策について記述する。(4)に他の設備を含めて騒音低減の考え方について記述する。
(1)
給水システムにおける騒音低減の考え方
給水器具で発生する騒音・振動のレベルは、給水器具に加わる給水圧によって決まり、給水圧が低ければ騒音・振動の発生は少ない。また、配管の分岐点、断面変化の急激なところでは、流速との関係で、発生する騒音・振動が大きくなるので、設計時には適正な給水圧と流速の設定が必要である。
(2)
給水栓等の騒音低減の考え方
騒音対策の基本は音源の処理にあるとの原則に従えば、給水栓等において低減方策を講じるのが必要である。一般に、吐水量と発生騒音レベルの相関関係は、水栓の種類によって異なっている。また、吐水量を決めるのはハンドルの開度と水圧であるが、この両者の関係も水栓によって異なっている。また、吐水量を一定とした場合の騒音の発生に開度の影響の出やすいものと出にくいものがある。
従って設計段階においては、給水栓の吐水量と騒音レベルの関係等を確認した上で、騒音の発生しにくい給水栓を採用する必要がある。
近年では、流体の乱れを防ぐ給水栓等が開発されており、効果を上げている。
参考5
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p119((社)日本建築学会編)
(3)
給排水配管の騒音低減の考え方
発生した振動を建物に伝えにくくするための給排水管の取付方法の改良には、ゴムなど防振材料の使用がすすめられている。さらに、騒音低減を図るように、動作機能自体を変えた改良器具等も開発されるようになった。
パイプシャフトの位置が建物の平面計画の際に考慮され、居室(居間、寝室等)の壁に面していないことを前提とすると、パイプシャフトからの横引管に対して施工上配慮すべき事項には次のものがある。
埋設配管をしない。
壁、床を配管が貫通する場合には、その部分の管と壁を緩衝材などにより絶縁する。
基本的に静かな環境を要求される居室(居間、寝室等)の壁に配管を固定することを避ける。ただし、やむを得ず固定する場合には、緩衝材などを入れ、防振支持仕様とする。
参考6
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p124((社)日本建築学会編)
(4)
設備機器類からの騒音低減の考え方
振動の伝搬と固体伝搬音の発生については、多くの関連する要素があり、振動、固体伝搬音の低減は理論的には各要素で実施できる。しかし、現実的に実施でき、かつ有効な低減方法は比較的限られており、そのなかで設備機器などの防振は最も簡易で確実な低減方法である。(参考7)
以下に具体的な留意点を示す。
給水ポンプ室は、居室・寝室部分から十分離れた場所に設置し、ポンプには防振架台を用い、配管の支持には防振装置付のものを用いる。
エレベータシャフトは、居室・寝室部分から十分離れた場所に設置する。
床暖房機能を備えたガス給湯器は、壁には取り付けず床設置とする。
気泡風呂用のブロワーを設置するときは、防振・防音対策を施す。
ディスポーザを取り付ける場合は、器具本体の防振と接続配管の貫通箇所の防振対策を十分に施す。
参考7
  • 「図解 空調・給排水の大百科」p586,587((社)空気調和・衛生工学会編、(株)オーム社発行)