調査方法編

排水配管からの騒音

1.排水配管からの騒音

排水管系で発生する騒音は、音の種類で分類すると固体伝搬音(固体音)であり、流水による加振力や振動が建物の構造体に入射・伝搬し、任意の空間に放射される騒音をいう。
具体的には、排水管の内圧や管内流下速度に関係して、便器、トラップ、管の継手、分岐などの排水器具において発生する流体の乱れによって生じる振動が主な原因である。
また、配管方法や配管材料、パイプシャフトの位置、建築工法、室内仕上げ、音の放射面積なども、室内に放射される騒音の量に影響を与えていることが想定される。
また、建築的、設備的要因以外にも、溜め洗い等による瞬時の多量排水といった使用上の要因も騒音の発生量に大きな関わりをもっている。

2.発生原因

(1)
不適切な排水配管等の設計
排水配管等の設計段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、騒音が発生することがある。
防音・防振材の仕様の選定
配管ルートの設定
衛生器具類の選定
管材・継手の種類、規格の選定
パイプシャフトの配置の設定
上下階での水場配置の設定
(2)
不適切な排水配管等の施工
排水配管等の施工段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、騒音が発生することがある。
使用した防音・防振材の仕様の選定
施工した配管ルートの設定
配管の接続及び支持・固定方法
使用した管材・継手の種類、規格の選定
床・壁を貫通する配管の防振対策
(3)
不適切な使用・メンテナンス
居住者の使用・メンテナンスに、以下のような不適切な点がある場合には、騒音が発生することがある。
トイレでの行為音
便器の洗浄排水音
溜め洗いの排水音
(4)
間違いやすい類似の不具合
  • 特に冬期において、ステンレス鋼板製シンクに高温水を流すと、結構大きなシンクの膨張音がするので注意する。
参考1
  • 「建築物の遮音性能基準と設計指針 第二版・1997年」p54、p119((社)日本建築学会編)
事前確認等

調査の視点

現場調査等にさきがけて、発生原因特定のための調査に必要な情報を把握し、調査の進め方の詳細等を検討しておく。

調査方法

  1. 居住者及び住宅供給者へのヒアリング並びに次の「2.」により、主として以下のような情報を確認し、整理しておく。
    住宅の構造・建て方、契約の内容等(木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造/戸建、集合 等)
    不具合事象の状況、発生部位、施工の状況等
    不具合事象の発見時期(新築後経過年数)
    不具合事象の程度の進行状況
    不具合事象の発生と季節・天候等との相関関係
    他の種類の不具合事象の発生状況
    周辺の住宅における同様の不具合事象の発生状況
    住宅の立地条件(気候・地形等)、近隣の状況
    不具合事象の発生後の処置の有無及び状況
  2. 住宅性能表示制度に基づき、建設住宅性能評価書が交付された住宅の申請図書等は、規定された期間、登録住宅性能評価機関等に保存される。
    したがってその保存期間内であれば、それらの申請図書等を、住宅紛争処理支援センターを経由して当該評価機関等から取り寄せることが可能である。
    (1)
    登録住宅性能評価機関に保存される帳簿は、以下の通りであり、業務の全部を廃止するまで保存される。(品確法第19条第1項、同法施行規則(以下「規則」という。)第20条第1項三号)
    住宅性能評価書に記載した事項を記載した帳簿
    (2)
    登録住宅性能評価機関に保存される図書は、以下の通りであり、建設住宅性能評価書が交付された日から20年間保存される。(品確法第19条第2項、規則第21条第1項・第3項、第15条第1項第一号ロ)
    建設住宅性能評価申請書(変更建設住宅評価申請書を含む)
    建設住宅性能評価申請書の添付図書
    • 設計住宅性能評価書
    • 設計評価申請添付図書
      住宅性能表示制度に基づく認定又は認証を取得した住宅又は住宅の部分については、以下の書類が添付される。
      * 住宅型式性能認定書の写し
      * 型式住宅部分等製造者等認証書の写し
      * 特別評価方法認定書の写し
      * 建築基準法に基づく確認済証
    施工状況報告書
    規則第6条第4項に規定する図書
    検査に際し評価機関が評価申請者に提出させたもの
    (3)
    登録住宅型式性能認定等機関、登録外国住宅型式性能認定等機関、登録試験機関又は登録外国試験機関に保存される図書は、以下の通りであり、認定又は認証が失効した又は取り消されたときから20年間保存される。(規則第68条第3項、規則第94条第3項)

    <住宅型式性能認定の場合>(規則第68条第1項第一号)

    住宅型式性能認定申請書
    住宅型式性能認定申請書の添付図書
    住宅型式性能認定書の写し
    その他審査の結果を記載した書類

    <型式住宅部分等製造者の認証(更新)の場合>(規則第55条第1項第二号(第三号))

    型式住宅部分等製造者等認証(更新)申請書
    型式住宅部分等製造者等認証(更新)申請書の添付図書
    型式住宅部分等製造者等認証書の写し
    その他審査の結果を記載した書類

    <特別評価方法認定の場合>(規則第94条第1項、第82条第1項)

    特別評価方法認定のための審査に係る試験申請書
    特別評価方法の概要を記載した書類
    特別評価方法により代えられるべき部分を明示した書類
    平面図等その他の試験を実施するために必要な事項を記載した図書
    試験の結果の証明書の写し
    その他審査の結果を記載した書類
    上記資料に基づき、住宅の性能表示項目に関して調査する場合には、該当する等級毎の基準を参照する。
    なお、評価方法基準の詳細については、平13国交告第1347号による。
  3. 以上の情報に基づき、調査の方法・進め方の詳細等を検討しておく。
騒音の発生状況の確認

調査の視点

  • 騒音は、排水配管の取り付け状態、取り扱い状況が原因で発生するため、騒音の伝搬場所等を入念に調査する。

調査方法

1.騒音の発生部位の確認

(1)調査方法

  • 騒音が発生している部屋から順次、目視・触診・聴診にて発生源を確認する。
  • 騒音計を用いて騒音の状況を確認し記録する。

(2)注意事項等

  • 暗騒音が大きい時間帯は避けて、問題が起きた時間帯で調査する。
  • 左右・上下階の他に、騒音が発生している所まで調査する。
  • 騒音に関しては、感覚的なものが大きく左右し、個人差があるので慎重に調査する。

調査結果の考え方

以下の場合に、排水配管から騒音が発生する可能性が高い。
  • 配管が、床・壁等に埋設配管されている。
  • 配管貫通部の防音・防振措置の不良が原因となる可能性がある。
  • 衛生器具類の選定が原因となる場合がある。
  • 汚水の落下音が原因となる可能性がある。
  • 通気量の不足が原因となる可能性がある。

使用する検査機器

  • 聴診器

<診断(調査)の専門性>

①騒音測定に関する専門技術者
②給排水衛生設備に関する専門技術者
設計内容の確認

調査の視点

  • 設計段階において、排水配管の防音・防振計画等が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.防音・防振設計内容等の確認

(1)調査方法

  • 当該住宅の設計図書(設計図、仕様書等)を対象として、平面計画上防音・防振対策の配慮が行われているか、設計等が適切であるかを確認する。

    以下に確認する主な項目を示す。
    防音・防振材の仕様の選定
    • 用途や使用条件に適合した防音・防振材の仕様が選択されているか。
    配管ルートの設定
    • 配管が、壁・床等に埋設されている。
    • 寝室、居間等の床に配管がある。
    • 配管に曲がり・合流箇所が多い。
    • 通気が考慮されていない。
    衛生器具類の設定
    • 大便器で節水6L形便器(※1)を使用している。
    管材・継手の種類、規格の選定
    • 特殊継手排水システム(※2)の排水横主管の管径の設定違い。
    • 曲がり部に大曲90度エルボの使用を選定していない。
    パイプシャフトの配置の設定
    • 寝室・居室から離れた位置に設定されている。
    上下階での水場配置の設定
    • 上階の水場が下階の寝室・居室の位置に設定されている。
      ※1
      短時間でサイホンを発生させるため、従来のものと比較すると、洗浄音がやや大きくなるので注意する。
      ※2
      排水用特殊継手を用いた排水システムで、伸頂通気方式の排水システムに用いられている。一管式排水とも言われている。

(2)注意事項等

  • 建築平面図でパイプシャフトと各室の配置関係を確認する。
  • 建築図の断面図で上下階の水場と居室の配置を確認する。

調査結果の考え方

  • 調査時に確認を行った主な項目について、適切な防音・防振対策が行われていない場合は、騒音が発生する可能性がある。
    防音・防振材の仕様の選定
    配管ルートの設定
    衛生器具類の選定
    管材・継手の種類、規格の選定
    パイプシャフトの配置の設定
    上下階での水場配置の設定

使用する検査機器

  • 特になし

<診断(調査)の専門性>

設計図書に、排水設備の詳細が記述されていなく、経路計画や防音・防振対策が不明な場合には、設計者あるいは専門家に相談することが必要である。
施工状況等の確認

調査の視点

  • 防音・防振対策にかかわる工事が適切に行われているかを確認する。

調査方法

1.書類による確認

確認のポイント
使用した防音・防振材の仕様の選定
施工した配管ルートの設定
配管の接続及び支持・固定方法
使用した管材・継手の種類、規格の選定
床・壁を貫通する配管の防振対策

(1)調査方法

  • 施工記録(施工図、工事状況報告書、工事写真等)により、把握できる範囲において防音・防振対策にかかわる工事が設計どおりに行われているかを確認する。

(2)注意事項等

  • 設計図と異なる埋設配管をしているかを確認する。
  • 管支持金物の防振・防音対策が施されているかを確認する。
  • 配管貫通箇所の防振・防音対策が施されているかを確認する。

2.目視等による施工状況の確認

(1)調査方法

  • 書類により確認した内容と実際の施工状況が一致しているか、不適切な施工が行われていないかを、目視・触診等により確認する。
  • 不適切な箇所が発見された場合には、写真等で記録をとる。記録した結果を、設計図書等と照らし合わせて確認する。

    以下に確認する主な項目を示す。
    使用した防音・防振材の仕様の選定
    • 設計で指定された仕様の防音・防振措置の施工がされているか。
    施工した配管ルートの設定
    • 設計と異なる配管ルートで配管がされていないか。
    • 床・壁に埋設配管をしていないか。
    • 寝室、居間等の床に配管をしていないか。
    • 排水横枝配管に曲がり・合流箇所を多くとっていないか。
    • 通気が適切に取れていないか。
    配管の接続及び支持・固定方法
    • 管支持・固定金物は、勾配が取れる形のものを使用しているか。
    • 管支持・固定金物は、アンカでしっかり固定されているか。
    使用した管材・継手の種類、規格の選定
    • 特殊継手排水システムの排水横主管の管径選定に間違いはないか。
    • 特殊継手排水システムの継手の組み合わせに間違いはないか。
    • 曲がり部に大曲90度エルボを適切に使用しているか。
    床・壁を貫通する配管の防振対策
    • 配管貫通部・管支持部の防音・防振対策等の措置がなされているか。
    • 配管が仕上材等に接触していないか。

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 調査時に確認を行った主な項目について、施工が設計どおり行われていない場合、または不適切な施工が行われている場合は、防音・防振対策上の施工不良等が原因で、騒音が発生している可能性が高い。

使用する検査機器

  • 聴診器

<診断(調査)の専門性>

①騒音測定に関する専門技術者
②給排水衛生設備に関する専門技術者
使用・メンテナンス状況の確認

4 使用・メンテナンス状況の確認」によるほか、以下の確認を行う。

調査の視点

  • 騒音の発生は、使用方法に起因する場合があるため、不適切な使用がなかったかを確認する。

調査方法

1.使用状況等の確認

(1)調査方法

  • 事前確認等を参考にして、給水設備の使用・メンテナンス状況が適切に行われているかを居住者へのヒアリングや目視・触診・聴診等により確認する。
    トイレでの行為音
    便器の洗浄排水音
    溜め洗いの排水音

(2)注意事項等

  • 特になし

調査結果の考え方

  • 騒音の原因はその特定が難しいため、発生原因が推定された後に以下のとおり方法等を変え、騒音の状況を観察する。
    トイレでの行為音の確認
    • やかん等で大便器に水を流し、擬似行為音で確認をする。
    便器の洗浄排水音の確認
    • 大便器の洗浄水を流し、洗浄排水音を確認する。
    溜め洗いの排水音の確認
    • 流し・洗面器等で溜め洗いをし、栓を抜いた時の排水音を確認する。

使用する検査機器

  • 聴診器

<診断(調査)の専門性>

①騒音測定に関する専門技術者
②給排水衛生設備に関する専門技術者
外的要因の確認

5 外的要因の確認」による。

詳細調査の必要性の検討

6 詳細調査の必要性の検討」による。