住宅を構成する部位
木造戸建住宅で発生する不具合
新築木造戸建住宅の「住宅瑕疵保険の事故」のデータを見ると、「雨水の浸入を防止する部分」で生じた雨漏りが9 割以上を占め、「構造耐力上主要な部分」の不具合の発生する割合は少ないといえます。
しかし、構造に関する不具合は雨漏りと比べ補修工事が大がかりとなることが多く、補修工事の費用も高額になる傾向があります。住宅の計画時の検討によって、不具合発生のリスクを低減することもできるので、住宅事業者と相談の上で適切な対策をとることが重要です。
「構造耐力上主要な部分の事故」の内訳を見ると、「基礎の沈下」や「基礎のひび割れ・欠損」が多く、次いで「横架材の傾斜・変形・破損」が多くなっています。
なお、「横架材の傾斜・変形・破損」の中で多い不具合は「梁の傾斜・変形」です。
構造に関する不具合住宅の傾きを防ぐには
住宅の傾きを防ぐには
構造に関する不具合で上位を占めるのは、「基礎の沈下」「基礎のひび割れ」「梁の傾斜・変形」です。
中でも「基礎の沈下」「梁の傾斜・変形」といった不具合は、建物自体や住宅内部の傾きの発生につながることがあります。
住宅瑕疵担保責任保険法人より提供を受けた、新築木造戸建住宅の構造に関する不具合事例を基に、住宅の傾きにつながる不具合発生のリスクを低減するポイントを紹介します。住宅計画時、住宅事業者への質問・相談等の際の参考にしてください。
基礎の沈下
基礎の沈下とは、基礎が本来あるべき位置よりも地表面の下に沈み込むことをいいます。
発生原因は様々ですが、一例としては、地盤の強さ・特性に応じた基礎の設計や地盤補強が実施されていないことによって生じます。
特に部分的に大きく沈下する等、基礎が不均一に沈下することを「不同(ふどう)沈下」といい、建物が傾いてしまうことがあります。
住宅の傾きリスクを
低減するポイント
梁の傾斜・変形
梁の一部分に重さ・力が集中し、支えきれなくなることで梁が傾く・たわむ等、傾斜・変形が発生します。
梁が傾斜・変形すると、その梁が支える床にも傾きが発生します。
住宅の傾きリスクを
低減するポイント
基礎のひび割れ
基礎のひび割れは、基礎の沈下によって発生することもありますが、発生の原因は、施工不良・コンクリートの材料品質等様々です。ひび割れの原因や状態によって、補修の要否や緊急性は異なります。
基礎の表面に保護のために塗られたモルタル※だけがひび割れていて、基礎にはひび割れが発生していないといったケース等、構造に関する不具合にあたらないケースもあります。
※モルタル…セメント、水、砂を練り混ぜたペースト状の材料
構造の安全性の確認建築基準法等の規定
建築基準法等の規定
建築基準法において建築物は、建築物自体の重さや風等による力、地震等による振動・衝撃に対して安全な構造のものとして、各種基準に適合することが求められています。
住宅を新築する際には、建築基準法に適合させる必要があり、構造の安全性の確認方法(壁量の計算や構造計算等)は、住宅の規模(面積・階数等)によって異なります。
住宅の計画にあたって、どういった確認方法をとるのか等、住宅事業者へ確認するとよいでしょう。
耐震性の確認については、住宅性能表示制度の活用(耐震等級2・3 の取得)も有効です。
住宅の計画・建設時のコスト
住宅を計画・建設する際には、設計料や建設工事費等、様々なコストがかかります。
敷地に係るコストとしては、地盤調査費や地盤補強工事費等があげられます。これらの費用は敷地の地盤状況によって異なり、地盤補強が必要となった場合は、かかる費用が大きくなりますが、「基礎の沈下」等の不具合リスクの低減のために必要なコストです。
また、「梁の傾斜・変形」等の不具合リスク低減に係る詳細な検討となる構造計算を実施する場合においても、一定の費用がかかるという点も認識しておきたいところです。