契約上の保証期間が過ぎた後に生じた建物の不具合について損害賠償請求できる?
基本的には住宅事業者に対し、有償で補修を依頼することになりますが、住宅事業者がわざとまたは注意不足により建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵のある建物を施工した場合には、保証期間が過ぎた後であっても補修費用等の損害賠償請求が可能な場合があります。
1.基本的には有償で補修を依頼
契約に定められた保証期間が過ぎた場合、その定め自体が無効であるなどの特別の事情※1がない限り、住宅事業者に無償での補修を依頼することはできません。したがって、基本的には住宅事業者に対し、有償で補修を依頼することになります。
2.不法行為責任が成立すれば住宅事業者への賠償請求が可能
(1)不法行為責任とは
民法では、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任(不法行為責任)を負うと規定※2されています。そして、最高裁判例※3では、「建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」がある場合、このことについて故意または過失のある設計者、施工者及び工事監理者は、不法行為責任を負うと判示されています。したがって、住宅事業者がわざとまたは注意不足により建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵のある建物を施工した場合には、住宅取得者は、契約上の保証期間を経過していても損害賠償責任を問うことができます。また、分譲マンションなどの場合には、住宅取得者と直接の契約関係にない設計者や施工業者等に対して、不法行為責任に基づく損害賠償責任を問える場合があります。
(2)不法行為責任の証明責任
不法行為責任は、契約とは関係ない請求であることもあり、最終的には訴訟にまで発展する可能性があります。そのため、住宅取得者は、「建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」があること、住宅事業者等に「故意または過失」があること、「損害」の発生等の事実を証明する必要が生じることがあるため、不具合の発生箇所を撮影する等、証拠を収集しておく必要があります。
3.不法行為責任も期間制限があるため要注意
不法行為による損害賠償請求権は、次の場合には、時効により消滅します。
①被害者(住宅取得者)が損害及び加害者(住宅事業者等)を知った時から3年間※4行使しないとき。(人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権のときは「5年間※5」。)
②不法行為の時(住宅事業者等がわざとまたは注意不足により施工した時)から20年間※6行使しないとき。
4.まとめ
不法行為責任は、訴訟にまで発展する可能性があるため、証拠の収集・分析などの高度な作業が必要になることがあります。法律の専門家である弁護士に早めに相談することをおすすめします。
※1 例えば、住宅品確法第94条第2項、第95条第2項、宅建業法第40条、消費者契約法第8条、第8条の2、第10条などに違反する場合
※2 民法第709条
※3 平成19年7月6日最高裁第二小法廷判決・民集61巻5号1769頁、平成23年7月21日最高裁第一小法廷判決・裁判集民237号293頁等
※4 民法第724条第1号
※5 民法第724条の2
※6 民法第724条第2号
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